公共工事とは?建設会社が知っておきたい基礎知識

公共工事の受注は、建設会社にとって大きなビジネスチャンスになります。この記事では、公共工事と民間工事との違いや入札制度の主な種類、公共工事の受注を目指すメリットとデメリットについて、わかりやすく解説していきます。

公共工事とは?

公共工事は社会の基盤を形作る重要な役割を果たしています。まずは、その定義と種類からみていきましょう。

公共工事の定義

公共工事とは、主に国や地方公共団体によって実施される工事のことです。「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入札契約適正化法)」には、次のように定義されています。

【入札契約適正化法第2条第2項】

この法律において「公共工事」とは、国、特殊法人等又は地方公共団体が発注する建設工事をいう。

公共工事は公共の利益を目的としており、公共の安全、利便性、快適性を高めるためのさまざまな施設やインフラの建設、修繕、改良などが含まれます。これらの工事は法律に基づいた厳格な基準と規制のもとで行われ、実施の際は高い品質と安全性が要求されます。

公共工事の主な種類

公共工事は、主に以下の5種類に分けられます。

【土木工事】

国道・県道・市道などの道路や橋、ダム、トンネル、上下水道などの建設や維持・管理を行う工事です。港湾や空港などの整備工事もこれに含まれます。主に基礎工事・造成工事・外構工事で構成されますが、建物そのものの建設は含まれません。

【建築工事】

建物の建設や維持・管理を行う工事です。主に基礎工事・構造躯体工事・外装工事・内装工事などで構成されます。具体例としては役所や学校、図書館、博物館、美術館などの公共施設が挙げられます。

【管工事】

空調や給排水などの設備を設置したり、液体・気体を配送する管を設置する工事です。具体的には冷暖房設備工事、給排水・給湯設備工事、浄化槽工事、ガス管配管工事などが挙げられます。

【電気工事】

送電設備や配電設備の設置、メンテナンスを行う工事です。発電所・変電所・送電線・配電線などの設備や、街灯や信号機の設置修理、公共施設の配電設備などが含まれます。

【造園工事】

国立公園をはじめとする公園、庭園や広場、緑地、街路樹などの整備や再生を行う工事です。これには植栽工事、地被工事、景石工事、伐採した草木の片付けなどが含まれます。近年は屋上等緑化工事も増えています。

公共工事と民間工事の主な違い

公共工事と民間工事には、いくつかの大きな違いがあります。

発注者

公共工事は「国、特殊法人等又は地方公共団体が発注する建設工事」と定義されています。具体的な発注者は以下の通りです。

  • 地方公共団体
  • 外郭団体(機構、公社など)
  • 特別の法律に基づく株式会社(日本郵便株式会社、首都高速道路株式会社、東日本高速道路株式会社など)

これに対し民間工事は、一般の民間企業や団体、個人が発注します。

資金調達方法

公共工事の資金調達は主に税金によって行われます。これは公共工事が、国民や市民など公共の利益に貢献することを目的としているためです。

一方、民間工事は企業や団体、個人の所有財産や借入金など、さまざまな方法で調達されます。

工事発注までの流れ

公共工事の発注プロセスは、以下の複数の段階を経て進行します。

  1. 立案:工事の必要性を検討する
  2. 計画:工事の規模や内容を計画する
  3. 予算化:工事の予算を確保する
  4. 積算:入札の予定価格を算出する
  5. 設計:設計図書を確定する
  6. 公告:発注内容を公表して請負企業を募集する
  7. 入札〜落札:入札書の提出を受け付け、落札者を決定する
  8. 発注〜竣工:落札者と契約を交わして工事を発注し、完成後に引き渡しを受ける

公共工事の発注が厳密なプロセスを経由するのに対し、民間工事の流れに特別な決まりはありません。多くの場合、より簡素なプロセスで発注されます。

公共工事の入札について

公共工事を発注する際は原則として入札が行われます。しかし入札には複数の方式が存在し、また例外的に入札以外の方式で発注が行われることもあります。ここでは代表的な方式として、一般競争入札、指名競争入札、随意契約について紹介します。

一般競争入札

一般競争入札は、発注者が工事の内容や条件を公示し、資格を有する事業者から提案を募る入札方式です。原則としてすべての事業者が参加できるのが特徴で、基本的には最も低い入札金額を提示した事業者が落札者に選ばれます。

一般競争入札では公開された条件に基づいて競争が行われるため、事業者にとっては平等な機会が与えられ、発注者にとってはコストパフォーマンスの高い事業者を選定しやすいのが特徴です。

関連記事:一般競争入札とは?他の入札との違いや流れ、落札のコツまで解説

指名競争入札

指名競争入札は、発注者が特定の資格や実績を有する事業者を事前に選定し、その中から入札参加者を指名する方式です。指名された事業者のみが提案を行い、その中から落札者が選ばれます。

指名競争入札は、特定の専門性や信頼性が求められる工事に適しており、発注者は事前に適切な事業者を選定することができます。しかし一般競争入札に比べて参加事業者が限られるため、透明性や競争性において課題が指摘されることもあります。

関連記事:指名競争入札とは?他の入札との違いや入札の流れ、具体的な入札案件の事例を紹介

随意契約

随意契約は入札の手続きによらず、発注者が特定の事業者と直接契約を結ぶ方式です。契約条件は当事者同士の交渉により決定されます。

なお随意契約は不透明な契約とみなされる危険があることから、入札に適さない特殊な商品やサービスの調達、緊急を要する契約、予定価格が一定金額より少額である場合、競争入札に参加者がいない場合などに限り、利用可能です。

関連記事:入札と随意契約の違いとは?事業者が目指すべき契約のポイント

公共工事の受注を目指すメリットとは

公共工事は、多くの建設会社にとって魅力的な案件といえます。ここでは主に3つのメリットを紹介します。

安定した売上

公共工事は「未払いリスク」が非常に低いため、事業者にとって安定した売上につながります。公共工事の発注者は国や地方自治体です。工事費用は税金から調達され、あらかじめ予算化されています。民間企業は支払いが滞るほど資金繰りが悪化してしまう可能性もありますが、公共工事の発注者には、そのようなことはほとんどありません。

技術力やノウハウの向上

公共工事への参加は、事業者にとって技術力やノウハウの向上につながります。公共工事は複雑で大規模な案件となることも多く、それに伴い最新の技術や高度な専門知識が要求されることがしばしばです。こうしたプロジェクトに参加することで、事業者は新しい技術を学び、専門的な経験を積むことができます。

公共事業への貢献

公共工事に携わることで、社会に貢献できるのもメリットの1つです。たとえば土木工事による道路、橋、上下水道の整備や、建築工事による市役所や学校の建設に参加することで、自社の技術により地域社会の生活基盤を支えることができます。

公共工事の受注を目指すデメリット

公共工事の受注を目指す際には、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。

競争が激しい

公共工事の入札は非常に競争が激しく、大企業を含め多くの企業が受注を目指しています。このため、確実に受注を獲得するには高い技術力や独自の提案が必要です。

ただし技術力や独自の提案をアピールするには、あらかじめ下請けなどの実績を積んでいる必要があるため、起業してすぐに公共工事を受注することは難しいでしょう。

入札制度の複雑さ

公共工事の入札制度は複雑であり、多くの手続きや規制が存在します。入札に参加するためには、これらの手続きや規制を理解し、適切に対応する必要があります。初めて公共工事に参加する事業者にとって、これは大きなハードルとなるでしょう。

なお入札の参加資格には「等級」が設定されていることが多く(A〜Dの4段階、など)、この等級によって入札参加できる工事の規模などが異なります。等級があること自体はデメリットではありませんが、参加を望む公共工事の入札に必ずしも参加できるわけではないことを理解しておきましょう。

関連記事:入札参加資格とは?種類や取得のための要件、等級についてわかりやすく解説します

まとめ

国や地方公共団体が発注する公共工事は、多くの事業者にとってメリットがあります。ただし受注を目指す際は、あらかじめ民間工事との違いを理解し、公共工事の受注を目指すメリットとデメリットを把握しておくことが重要です。

厳しい入札競争を勝ち抜くため、技術力やノウハウの向上、入札制度への理解など、しっかりした準備を行っていきましょう。

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