指名競争入札とは?他の入札との違いや入札の流れ、具体的な入札案件の事例を紹介

指名競争入札は、さまざまな入札方式の中でも一般競争入札に次いで利用されることの多い「メジャーな」入札方式です。この記事では指名競争入札の特徴や他の入札方式との違い、メリット・デメリット、入札手続きの流れや指名を受けるためのポイントについて詳しく紹介していきます。

指名競争入札とは

指名競争入札とは、官公庁(発注者)があらかじめ指名した事業者だけが入札に参加できる入札方式です。

予算決算及び会計令(予決令)第95条によると、官公庁は指名競争入札を行う際に「工事、製造又は販売等の実績、従業員の数、資本の額その他の経営の規模及び経営の状況に関する事項について」必要な資格を定めるとされています。

しかし基準を満たす企業すべてが指名されるとは限りません。このため指名競争入札は「指名の基準があいまい」との批判を浴びており、中には指名を受けられなかった事業者が訴訟を起こしたり、官製談合の温床になるケースもあるとされています。

指名競争入札は官公庁、特に地方自治体が行う入札方式の主流でしたが、上記の事情により次第に(より透明性が高い)一般競争入札に取って代わられるようになりました。

現在では原則として少額の契約や、以下に当てはまるようなケースで指名競争入札が利用されています。

  • 契約の性質や目的上、競争する企業が少ない場合
  • 契約の性質や目的上、一般競争入札に適しない場合
  • 不誠実な業者が参加するのを避ける場合
  • 特殊な案件で検査が著しく困難な場合

このように指名競争入札は、どちらかというと「例外的」な入札方式です(ただし実際には、現在でも指名競争入札による入札案件は決して少なくありません)。

落札者の決定方法

指名競争入札では指名を受けて入札に参加(入札書を提出)した事業者のうち、最も有利な条件を提示した事業者が落札者となります。「最も有利な条件」の判断方法は以下の二通りです。

価格競争方式

入札書の金額のみ(原則として最も安い金額)で落札者を決定する方式

総合評価落札方式

金額以外に加えて技術提案(設計および施工方法等に関する提案)を提出させて、 これらを総合的に考慮して落札者を決定する方式

どちらの方式で落札者を決定するかは発注者や入札案件によって異なります。

指名競争入札のメリット・デメリット

かつては入札方式の主流で、今もなお一部の入札案件で利用されている指名競争入札。そのメリットとデメリットについてしっかり理解することが、入札制度を有利に活用するためのカギとなります。

メリット

指名競争入札は、事業者にとって以下のようなメリットがあります。

  • 落札できる可能性が高い
  • 価格競争になりにくい
  • 官公庁と長期的な付き合いが見込める

まず「落札できる可能性が高い」のは、入札に参加する(参加できる)事業者の数が限られているためです。指名競争入札では官公庁側から指名された事業者しか入札に参加できないため、不特定多数の事業者によって競争が激化するおそれがありません。

それと関連するのが「価格競争になりにくい」というメリットです。競争が激しい入札案件ではどうしても過剰な低価格競争になりがちですが、指名競争入札では入札者が限られるぶん、価格競争のリスクが少なくなります。

「官公庁と長期的な付き合いが見込める」というのは、一度指名を受けた事業者は再び別の入札案件でも指名を受ける可能性が高いためです。実績と信用が上がるほど入札に参加できるチャンスも大きくなるため、特に公共工事を収益の柱にしたいと考えている事業者にとっては「美味しい」入札方式といえるでしょう。

一方、指名競争入札は発注者である官公庁にとっても以下のようなメリットがあります。

  • 安全性が高い(トラブルの防止)
  • 品質を確保しやすい

指名競争入札は事前に審査したうえで入札参加者を決めるため、たとえば反社会勢力のような不適格事業者や過去にトラブルを起こしている事業者などを入札から排除できます。「安全性が高い」というのはそのような意味です。

また「品質を確保しやすい」というのも同様で、たとえば発注する工事に必要な技術や実績を持つ事業者だけを入札に参加させることで、工事の質を担保することにつながります。

デメリット

指名競争入札には重大なデメリットもあります。特に事業者にとっては、

  • 実績がないと入札に参加できない

のが大きなネックになるでしょう。実績がなければ指名を受けられませんが、そもそも入札に参加できなければ実績を作れないので、すべての入札案件が指名競争入札だと、新規参入の事業者はいつまでたっても公共工事などを受注できないことになります。

官公庁にとってのデメリットは、

  • 談合の温床となりやすい
  • 入札価格が高止まりしやすい

ことです。入札に参加する事業者が「いつもと同じ顔ぶれ」だと、事業者同士が持ち回りで利益を確保するため談合に走る危険が高まります。中には官公庁自らが動いて「官製談合」を行うケースも皆無ではありません。

また談合が常態化すれば競争の原理が働かなくなるため、入札金額が高止まりしてしまいます。このような入札が続けば、他の事業者や市民からの信用を失ったり、訴訟のリスクを抱えることにもなるでしょう。

指名競争入札と他の入札方式の比較

ここまで指名競争入札の仕組みやメリット・デメリットについて説明してきましたが、指名競争入札はあくまで入札方式のひとつにすぎません。実は官公庁が行う契約には大きく分けて3つの区分があり、さらに細かく7つの契約方式に分けることができます。

区分契約方式
一般競争契約①一般競争入札
②オープンカウンター(見積り)
指名競争契約③指名競争入札
④公募型指名競争入札
随意契約⑤随意契約
⑥プロポーザル方式入札(企画競争入札)
⑦公募

それぞれの契約方式の内容については『代表的な入札方式をわかりやすく解説!特徴からメリット・デメリットまで』でも解説していますが、今回は特に①の「一般競争入札」、④の「公募型指名競争入札」、⑤の「随意契約」、⑥の「プロポーザル方式入札(企画競争入札)」をピックアップして、指名競争入札との違いを解説します。

一般競争入札との違い

一般競争入札は、官公庁が入札案件(契約内容や参加資格など)の公告を行い、不特定多数の入札者のうち「最も有利な条件」を提示した者が契約者(落札者)となる入札方式です。つまり基本的な参加資格を満たす限り、誰でも入札に参加できるのが指名競争入札との大きな違いとなります。

なお入札以降の流れ(落札者の決定や契約)は指名競争入札と同じです。


指名競争入札一般競争入札
参加者官公庁が指名する事業者公募の参加資格を満たす事業者
契約相手の決め方・価格競争方式
・総合評価落札方式
・価格競争方式
・総合評価落札方式

関連記事:『一般競争入札とは?他の入札との違いや流れ、落札のコツまで解説

公募型指名競争入札との違い

公募型指名競争入札(希望制指名競争入札)は指名競争入札と一般競争入札の中間のような入札方式で、まず最初に事業者の側から「応募」を行い、官公庁は応募者の中から要件を満たす事業者を指名して入札を行います。

事業者の希望と無関係に指名が行われる指名競争入札と比べ、公募型指名競争入札は公平性と透明性、競争性が高いのが強みです。


指名競争入札公募型指名競争入札
参加者官公庁が指名する事業者応募者の中から官公庁が指名する事業者
契約相手の決め方・価格競争方式
・総合評価落札方式
・価格競争方式
・総合評価落札方式

関連記事:『公募型指名競争入札とは?他の入札方法との違いをわかりやすく解説

随意契約との違い

随意契約は「特命随意契約」とも呼ばれ、官公庁が競争入札を実施せずに事業者と契約を結ぶ契約方式のことです。一般に価格の低い契約や「国の行為を秘密にする必要があるとき」などに利用されます。

指名した事業者=契約者なので契約手続きはシンプルかつスムーズですが、一方で指名の基準は指名競争入札と同等以上に不透明な契約方式です。


指名競争入札随意契約
参加者官公庁が指名する事業者官公庁が単独指名する事業者
契約相手の決め方・価格競争方式
・総合評価落札方式
官公庁の指名による

関連記事:『特命随意契約とは?他の契約との違いや法令上の根拠、随意契約理由書について解説

プロポーザル方式(企画競争入札)との違い

プロポーザル方式(企画競争入札)とは、事業者が一定のテーマに基づいて金額や方針を提案し、官公庁が提案された内容を総合的に評価して契約者を決定する契約方式です。主に「技術的に高度」な案件や「専門的な技術が要求される」業務の発注に利用されます。

指名競争入札との違いは「公募型」と「指名型」があり、このうち指名型は指名競争入札と同様、官公庁側から参加者を指名します。契約相手の決め方は提案価格と提案内容を総合的に考慮するため指名競争入札の総合評価落札方式と似ていますが、そもそもプロポーザル方式は競争入札ではない(随意契約の一種)ところが大きな違いです。


指名競争入札プロポーザル方式
参加者官公庁が指名する事業者・公募の参加要件を満たす事業者
・官公庁が指名する事業者
契約相手の決め方・価格競争方式
・総合評価落札方式
提案価格と提案内容を総合的に考慮して優先交渉権者を選定
(優先交渉権者との交渉が不調の場合は次点の交渉権者と交渉)

関連記事:『プロポーザル方式(企画競争)入札とは?コンペとの違いや流れを解説

指名競争入札の流れ

指名競争入札は、おおむね以下の流れで実施されます。

①資格審査

あらかじめ官公庁が定めた資格基準や名簿に基づいて、競争入札に参加させる事業者を決定します。

②指名(通知)

①で決定した事業者に、指名の通知をします。指名数は案件の内容によって異なりますが、おおむね数社〜10社程度になるのが一般的です。

③入札

通知を受けた事業者のうち、契約を希望する事業者が入札に参加します(指名後に参加を辞退することも可能です)。ここからの流れは一般競争入札と同じで、入札期日までに指定された方式(電子入札、入札書の郵送・持参など)で入札を行います。

④落札

入札の内容に基づき、価格競争方式もしくは総合評価落札方式で最も有利な条件を提示した事業者が落札者となります。落札者が決まると、入札に参加したすべての事業者にその旨が通知されます。

⑤契約

入札書で提示した入札金額などに基づいて、官公庁と事業者の間で契約が行われます。

指名されるためのポイント

デメリットのところでも説明しましたが、原則として指名を受けるには「実績」が必要です。これは創業したての事業者や新規参入の事業者にとっては非常に厳しい条件といえるでしょう。

それでも指名競争入札への参加を希望するのであれば、まずは目当ての官公庁が定める指名基準を理解し、その基準を満たすこと大前提となります。たとえば「厚生労働省」の指名基準は同省のWEBサイトで公表されています。その他の官公庁についても、WEBサイトを見たり直接問い合わせるなどして、指名基準を確認してください。

次に必要なのが実績作りです。資格要件を満たす一般競争入札に参加するのが近道になるでしょう。一般競争入札は価格競争になりやすいため利益はあまり見込めませんが、いくつもの実績を積み重ねることで官公庁の指名対象になる可能性があります。

まとめ

価格競争になりにくい指名競争入札は、公共工事などで利益を上げたい事業者にとって魅力的な入札方式です。ただし指名を受けるには「資格」とある程度の「実績」が必要となるため、これまで公共工事などを受注したことがないのであれば、まずは一般競争入札で実績を積み重ねてから指名競争入札への参加を目指すと良いでしょう。

記事一覧へ
14日間無料トライアルのお申し込みはこちら14日間無料トライアルのお申し込みはこちら
03-3823-6006【平日】9時30分~18時30分
エリアカテゴリー
業種で探す
土木
建築
電気
管設備
業務委託
その他
発注機関で探す
国(関東)・法人・民間など
茨城
栃木
群馬
埼玉
千葉
東京
神奈川
新潟
山梨
長野