主任技術者・監理技術者とは?資格・要件・役割などの違いのわかりやすいまとめ

建設業にはさまざまな職務があります。「主任技術者」と「監理技術者」もその一部ですが、名前が似ていることもあって両者を混同している人も少なくありません。

この記事では主任技術者と監理技術者の役割や要件を中心に、両者の違いについて詳しく説明していきます。

主任技術者・監理技術者とは

主任技術者と監理技術者は、どちらも建設業に欠かせない職務です。両者は名前が似ていますが、建設工事で果たす役割や就任の要件に違いがあります。

主任技術者・監理技術者はどんなときに必要?

主任技術者と監理技術者は「建設工事を施工するとき」に、工事現場に配置する人たちです。ただし両者は同時に配置されるわけではありません。基本的にはすべての建設工事で主任技術者の配置が義務付けられていますが、請負金額など一定の要件を超える建設工事の場合は、主任技術者に代わって監理技術者の配置が必要です。

なお主任技術者の配置義務は、2020年10月に施行された改正建設業法で一部緩和されました。具体的には以下の2つの条件を満たす工事に限り、主任技術者を置かなくても良いことになっています。

  1. 「鉄筋工事」か「型枠工事」であること
  2. 下請代金の合計額が3,500万円未満であること

このように、主任技術者の配置が免除されるケースは非常に限られています。現時点では、ほぼすべての工事で主任技術者(もしくは監理技術者)が必要、と考えてください。

専任技術者と主任技術者・監理技術者の違い

建設業は「専任技術者」という職種もあります。こちらも主任技術者・監理技術者によく似た名前ですが、役割は大きく異なります。

まず専任技術者は「建設業許可」を受ける際に必須となる人です。主任技術者や監理技術者は工事の際に必要ですが、建設業許可の手続きとは関係ありません。

次に専任技術者が配置されるのは営業所です(現場には出ません)。これに対し主任技術者と監理技術者は工事現場に配置されます。

また主任技術者と監理技術者が計画の作成や現場の監理・監督などを行うのに対し、専任技術者の担当は工事方法の検討や契約締結などです。

社員としての身分にも違いがあります。主任技術者や監理技術者は「直接的・恒常的な雇用関係にある者(つまり、その建設会社の社員)」が原則ですが、専任技術者はその営業所に常勤する限り他社からの出向社員でも構いません。

名前に「専任」という言葉が入っている通り、専任技術者は基本的に専任、つまり主任技術者や監理技術者を兼ねることができません。ただし以下の3つの条件をすべて満たす場合に限り、専任技術者が主任技術者・監理技術者を兼ねることが認められます。

  1. 専任技術者当人が置かれた営業所で契約締結された建設工事であること
  2. 営業所と工事現場が近接し、常時連絡をとれる体制があること
  3. 「専任であることが求められる工事」ではないこと

※専任であることが求められる工事とは、公共性のある施設・多数の者が利用する施設などの工事で、請負金額が1件あたり3,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)のもの

主任技術者について

ここからは主任技術者について詳しく説明していきます。繰り返しになりますが、主任技術者は工事現場に必ず配置しなければなりません。法律(建設業法)には次のように規定されています。

建設業法第26条
建設業者は、その請け負った建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第7条第2号イ、ロまたはハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。

法律上、主任技術者が置かれる工事について元請・下請の区別や金額の制限はありません。つまり請負金額が低い工事でも、原則として主任技術者が必要です(請負金額が高い工事では監理技術者を代わりに置きますが、これについては後ほど説明します)。

ただし、一部例外があります。主任技術者が不要なケースについては、『主任技術者の設置が不要なケースとは?専門工事一括管理施工制度の要件を解説』の記事をぜひご覧ください。

主任技術者の役割

主任技術者の役割は大きく分けて次の4つです。

  1. 施工計画の策定・実行
  2. 工事の工程管理
  3. 工事の品質管理
  4. 工事の安全管理

なお①の施工計画とは、工事が設計図通り、予算通り、そして安全に行われるように計画することです。この際、特に以下の5項目について検討が行われます。

  • 工事の目的・内容・契約条件等の把握
  • 現場の条件
  • 基本工程
  • 施工方法
  • 仮設備の選択や配置

作成した計画に従って、工事の工程や品質・安全の確保を行うのも主任技術者の役目です。

主任技術者になるには

上に挙げた条文では主任技術者の要件について「第7条第2号イ、ロまたはハに該当する者」と書かれていますが、実はこれは「専任技術者」の要件の一部です。

参考:建設業許可とは?取得要件や種類、申請の流れなどを解説します

ここではイ、ロ、ハについて、ごく簡単に説明します。

イに該当する者:高校が中学校を卒業して5年以上の実務経験がある人、もしくは大学(短大を含む)か高等専門学校を卒業して3年以上の実務経験がある人

ロに該当する者:10年以上の実務経験がある人

ハに該当する者:国土交通大臣が認定した人

なお、主任技術者になるために上記以外の資格は特に必要ありません。

主任技術者の注意点

主任技術者には2つの注意点があります。

①直接雇用の正社員であること

主任技術者は専任技術者と違い、工事を担当する建設会社に直接雇用された正社員でなくてはなりません(直接的かつ恒常的な雇用関係)。

つまり他社からの出向や、アルバイトなどは認められないということです。直接雇用の正社員かどうかは、健康保険被保険者証の交付年月日や雇用契約書などで確認できます。

②工事現場の兼任は不可

原則として、複数の工事現場で同時に主任技術者になることはできません。

ただし公共性のある重要な工事で、同一の建設業者が請け負い、工事現場が同じ(もしくは近接する)工事については主任技術者の兼任が例外的に認められます。また「工期が重なる」「工事対象に一体性が認められる」複数の工事は「1つの工事」とみなされ、やはり兼任が認められます。

監理技術者について

次に監理技術者について詳しく説明します。監理技術者は一定の条件を満たす建設工事で、主任技術者に代えて設置する人のことです。建設業法では次のように規定されています。

建設業法第26条第2項
発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が2以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第3条第1項第2号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第15条第2号イ、ロまたはハに該当する者(当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあっては、同号イに該当する者または同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。

主任技術者との違いは3つです。

  1. 「発注者から直接建設工事を請け負った」、つまり元請の工事であること
  2. 「特定建設業者」に限定
  3. 「下請契約の請負代金の額」が一定以上、つまり一定額以上の下請契約を結ぶ場合のみ

ちなみに③に該当する請負代金の金額は、1件あたり4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上です。

監理技術者の役割

監理技術者の役割は大きく分けて次の4つです。

  1. 施工計画の策定・実行
  2. 工事の工程監理
  3. 工事の品質管理
  4. 工事の安全監理
  5. 下請の指導監督

主任技術者の役割と同じく、①の施工計画は、工事が設計図通り、予算通り、そして安全に行われるように計画することです。計画では以下の5項目について検討が行われます。

  • 工事の目的・内容・契約条件等の把握
  • 現場の条件
  • 基本工程
  • 施工方法
  • 仮設備の選択や配置

作成した計画に従って、工事の工程や品質・安全の確保を行うのも監理技術者の役目です。

なお、主任技術者との違いは⑤の「下請の指導監督」です。監理技術者には下請の人たちを適切に指導、監督するという総合的な役割と責任が与えられています。

監理技術者になるには

監理技術者の要件は「第15条第2号イ、ロまたはハに該当する者」とありますが、これは「特定建設業の専任技術者」の要件と同じです。

参考:建設業許可とは?取得要件や種類、申請の流れなどを解説します

こちらもイ、ロ、ハそれぞれついて簡単に説明します。

イに該当する者:国土交通大臣が定める国家試験の合格者

ロに該当する者:一般建設業の専任技術者のうち、4,500万円以上の元請工事で2年以上の指導監督的な実務経験がある人

ハに該当する者:国土交通大臣が認定した人

監理技術者には下請けの指導・監督という重大な責任があるため、主任技術者よりも厳しい要件となっています。

また監理技術者は「監理技術者資格者証」の交付を受け、「監理技術者講習」を修了していなければなりません(これについては最後に説明します)。

監理技術者の注意点

監理技術者の注意点も、主任技術者と同じく以下の2点です。

  1. 直接雇用の正社員であること
  2. 工事現場の兼任は不可

ただし②については「例外」の扱いが多少異なります。

主任技術者は「公共性のある重要な工事で、同一の建設業者が請け負い、工事現場が同じ(もしくは近接する)工事」に兼任が認められましたが、監理技術者にこの例外は適用されません(「工期が重なる」「工事対象に一体性が認められる」複数の工事は兼任可能です)。

加えて、以下の期間については発注者と建設業者が書面で合意している場合に限り、複数の工事現場での監理技術者の兼任が認められます。

  • 現場施工に着手するまでの間(資材の搬入や仮設工事などの準備期間中)
  • 自然災害で工事が全面的に停止している期間
  • 構造物の「工場製作」のみ行われている期間(たとえば橋梁やエレベーターなど)
  • 事務手続きや後片付けのみの期間(工事終了後)

2021/10/05追記

これまで複数の工事現場を兼任できなかった監理技術者ですが、2020年10月1日から施行された改正建設業法では条件付きで兼任が認められるようになりました。詳しくは、「専任義務があった「監理技術者」が兼任OKに緩和!変更点や条件を詳しく解説」をご覧ください。

監理技術者資格者証と監理技術者講習修了証について

最後に「監理技術者資格者証」と「監理技術者講習」について説明します。

監理技術者資格者証とは、監理技術者が「監理技術者として建設工事に従事しているとき」に常時携帯する証明書です。もし発注者から請求があれば監理技術者はこの証明書を提示しなければなりません。

監理技術者資格者証の交付を受ける際は、必要書類に手数料(7,600円)を添えて「一般財団法人建設業技術者センター」に申請します。申請から発行までの期間は、おおよそ10日〜1か月程度です。

なお監理技術者資格者証の有効期限は「5年間」なので、工事期間中に有効期限が切れないよう注意しなければなりません。有効期限の更新手続は、期限満了の6か月前から可能です。

次に監理技術者講習ですが、講習は以下の「登録講習実施機関」が実施してします。

  • 一般財団法人 全国建設研修センター
  • 一般財団法人 建設業振興基金
  • 株式会社 建設産業振興センター
  • 一般社団法人 全国土木施工管理技士会連合会
  • 株式会社 総合資格
  • 株式会社 日建学院

講習を修了すると「監理技術者講習修了証」が発行されます。修了証の日付は「工期のどの期間から見ても5年以内」でなくてはなりません。工事期間中に5年が経過しそうな場合は、再度講習を受講して新しい修了証を発行してもらいます。

監理技術者の更新については、「監理技術者を更新するには?有効期限が切れた場合についても解説」で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

まとめ

今回は主任技術者と監理技術者について細かく説明しました。どちらも建設工事に欠かせない職務ですが、工事での役割や必要要件は異なります。それぞれの違いをしっかり理解して、ルールにのっとった建設工事を行うよう心掛けてください。

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