建設業許可とは?取得要件や種類、申請の流れなどを解説します

「建設業許可」は、建設業に携わるすべての人にとって重要な制度です。しかし許可の要件は複雑で手続きにも多くの書類を用意する必要があるなど、非常に「わかりにくい制度」としても知られています。この記事では建設業許可の概要をはじめ、必要な要件や具体的な手続きの流れについて「わかりやすく」説明していきます。

建設業許可の制度について

建設業許可は「建設業」に携わる人たちを対象とした制度です。ここでいう建設業とは、元請・下請や法人・個人を問わず「建設工事の完成を請け負う」すべての事業者のことを指します。

建設業許可は必ず必要?

建設業許可について多くの人が感じる疑問のひとつが「建設業許可は必ず必要なの?」というものです。もしかすると「うちは建設会社だけど建設業許可は持っていないよ」という人もいるかもしれません。

原則として、建設業許可はすべての建設業者に必要です。ただしこれには例外があって、請け負う工事が「軽微な建設工事」のみであれば建設業許可は必要ありません。軽微な建設工事とは、具体的には以下のような工事です。

工事の種類要件
建築一式工事1件あたりの請負代金の額が税込1,500万円未満の工事か、延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
上記以外の建設工事1件あたりの請負代金の額が税込500万円未満の工事

もし建設業許可がないまま、上の条件に当てはまらない(軽微ではない)建設工事を請け負うと「建設業法違反」となります。最大で3年以下の懲役や300万円以下の罰金を受ける可能性があるほか、5年間は建設業許可の取得が不可能になるなど重いペナルティがあるため十分注意が必要です。

建設業許可には種類がある

ひとくちに建設業許可といっても、実はいくつもの「種類」があります。ここでは3パターンの種類について説明します。

大臣許可と知事許可

建設業許可には「大臣許可」と「知事許可」の2種類があります。それぞれの違いは「営業所の所在地」です。

許可の種類要件許可行政庁
大臣許可建設工事に関わる営業所(本店や支店など)が複数あって、それらが複数の都道府県に所在している場合北海道開発局
地方整備局
沖縄総合事務局
知事許可建設工事に関わる営業所がひとつしかないか、複数あってもすべて単一の都道府県に所在している場合都道府県知事

ちなみに大臣許可の「複数の都道府県」というのは、あくまで営業所の所在地の話です。仮に営業範囲が全国でも、営業所がひとつの都道府県に収まっているなら「知事許可」となります。

一般建設業と特定建設業

建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」という区分もあります。違いは「一定金額以上の下請契約を結ぶかどうか」です。

許可の種類要件
一般建設業下記以外の建設業者
特定建設業発注者から直接請け負う工事1件につき、
4,000万円(建築工事業の場合は6,000万円)以上の「下請契約」を結ぶ建設業者

分類のポイントは「下請契約を結ぶかどうか」と「その金額」です。たとえば発注者からどれだけ高額な工事を請け負ったとしても、下請契約を結ばなかったり、ほとんどの工事を自分で行うなどして下請契約の金額が低い場合は「一般建設業」になります。

一式工事と専門工事

建設業許可は「一式工事」と「専門工事」に分けられます。しかも一式工事だけで2種類、専門工事では27種類(合計29種類)もあり、非常に種類が多いのが特徴です。

許可の種類内容詳細な種類
一式工事複数の専門工事を組み合わせた総合的な工事1)土木一式工事
2)建築一式工事
専門工事専門分野ごとの個別工事3)大工工事
4)左官工事
5)とび・土木・コンクリート工事
6)石工事
7)屋根工事
8)電気工事
9)管工事
10)タイル・れんが・ブロック工事
11)鋼構造物工事
12)鉄筋工事
13)舗装工事
14)しゅんせつ工事
15)板金工事
16)ガラス工事
17)塗装工事
18)防水工事
19)内装仕上工事
20)機械器具設置工事
21)熱絶縁工事
22)電気通信工事
23)造園工事
24)さく井工事
25)建具工事
26)水道施設工事
27)消防施設工事
28)清掃施設工事
29)解体工事

建設業許可を取得する場合は、自分が携わる工事(専門工事)すべての許可を得る必要があります。

ちなみに一式工事の許可があっても、個別の専門工事を行う場合はそれぞれの許可が必要です。たとえば「建築一式工事」を受注して、そこに含まれる「大工工事」と「電気工事」も自分で行うなら、合計3つ(建築一式工事、大工工事、電気工事)の許可を受けなくてはなりません。

建設業許可取得のメリット

建設業許可は「一定金額以上の下請け契約を結ぶ場合」に必須ですが、それ以外にもメリットがあります。

一つ目のメリットは「公共工事の入札に参加できる」ことです。公共工事の入札に参加するには「経営事項審査(経審)」という審査を受ける必要があり、その経審を受けるには、大前提として建設業許可が必要です。

別のメリットは「(下請などの)受注が増える可能性」です。建設業許可を取得するには、いくつもの厳しい要件をクリアしなくてはなりません。つまり建設業許可があれば一定以上の経営経験や技術力、資産などがあることを公に証明できるというわけです。結果として元請業者から「安心な下請先」と判断され、受注のチャンスが増えるかもしれません。

建設業許可の5つの要件

ここからは建設業許可を受けるための5つの要件について説明していきます。

①経営業務の管理責任者

まず以下の条件を満たした「経営業務の管理責任者」が1名以上必要です。

要件(以下のいずれかに該当)要件(以下のいずれかに該当)
法人で許可を受ける場合常勤の役員(代表取締役や取締役)
※他の企業との兼業はNG
1)受けようとする許可業種で5年以上の経営経験
2)受けようとする許可業種以外の業種で6年以上の経営経験
3)いずれかの許可業種で6年以上の補佐経験 ※注1
個人で許可を受ける場合・事業主本人
・支配人登記した支配人

※注1 工事の施工に必要な資金調達、技術者や技能者の配置、下請業者との契約締結などの業務経験のこと

②専任技術者

次に以下の条件を満たした「専任技術者」が、営業所ごとに1名以上必要です。

許可の種類要件(以下のいずれかに該当)
一般建設業許可1)指定学科修了者で高卒後5年以上もしくは大卒後3年以上の実務の経験を持つ者
2)指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験があるか、専門学校卒業後3年以上実務の経験に加えて専門士か高度専門士の称号を持つ者
3)許可を受けようとする建設業に係る建設工事で10年以上実務の経験を持つ者
4)国家資格者(注1)
5)複数業種に係る実務経験を持つ者(注2)
特定建設業許可1)国家資格者(注1)
2)一般建設業許可の専任技術者に該当し、さらに許可を受けようとする建設業で発注者から直接請け負う4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的な実務経験を有する者(注3)
3)大臣特別認定者(特別認定講習を受けて効果評定に合格した、もしくは国土交通大臣が定める考査に合格した者)(注4)
※指定建設業(土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業)については、上記1もしくは3のいずれかを満たすこと

(注1)国家資格の種類については国土交通省「営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧」を参照
(注2)複数業種に係る実務経験については国土交通省「指定学科一覧」を参照
(注3)指導監督的な実務経験とは、建設工事の設計や施工の全般で工事現場主任や現場監督者のような資格で工事の技術面を総合的に指導監督した経験のこと
(注4)特別認定講習と国土交通大臣が定める考査は、現在は実施されていない

③誠実性

誠実性とは、請負契約の際に不正や不誠実な行為をするおそれがない、あるいは法令に違反するようなことをしないという意味です。誠実性の対象となるのは、

  • 建設業許可を受けようとする法人
  • 建設業許可を受けようとする法人の役員
  • 個人事業主
  • 使用人(支店長や営業所長といった立場にある人)

などの人たちです。

④財産的基礎又は金銭的信用

建設業では労働者の賃金や資材・機材の購入費など、まとまった額の資金が必要です。このため建設業許可を受けるためには「一定以上の財産を持っていること」を証明しなくてはなりません。具体的には以下のような要件を満たす必要があります。

許可の種類要件
一般建設業許可以下のいずれかに該当すること
・自己資本が500万円以上であること
・500万円以上の資金調達能力を有すること
・許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
特定建設業許可以下のすべてに該当すること
・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
・流動比率が75%以上であること
・資本金の額が2,000万円以上で、自己資本の額が4,000万円以上であること
許可の種類要件
一般建設業許可以下のいずれかに該当すること
・自己資本が500万円以上であること
・500万円以上の資金調達能力を有すること
・許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること
特定建設業許可以下のすべてに該当すること
・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
・流動比率が75%以上であること
・資本金の額が2,000万円以上で、自己資本の額が4,000万円以上であること

⑤欠格要件

最後は欠格要件です。主に以下の要件に当てはまる場合、建設業許可を受けることができません。

  • 破産者
  • 建設業法違反などで許可を取り消されてから5年が経過しない者
  • 営業禁止の処分を受けている者
  • 禁錮以上の刑が終わってから5年が経過しない者
  • 暴力団関係者
  • 精神の障害により適切な判断や意思疎通ができない者

建設業許可取得の流れ

建設業許可の取得は、おおまかに3つのステップで行われます。

①要件のチェック

すでに説明した「5つの要件」を満たしているかどうか確認します。どれかひとつでも満たせない場合は許可を受けられないため、念入りにチェックしましょう。

② 許可申請書、添付書類の作成

必要な要件を満たしたら、次は書類の作成です。法人か個人かによって書類の種類や数が変わるため、こちらも注意が必要です。

国土交通省「【許可申請に必要となる書類の一覧】〈令和3年1月1日より適用〉」より引用

③予備審査、申請書の提出

書類が準備できたら次は予備審査です。許可行政庁にある相談窓口(建設業課の相談コーナー)に書類一式を揃えて提出します。 予備審査で問題が見つからなければ正式に申請書を提出し、手数料を納入して完了です。

建設業許可の取得に必要な期間

申請書類に不備がなく、申請内容に問題がなければ「1〜3ヶ月程度」で許可が下ります。窓口が混み合う時期はどうしても審査期間が長くなってしまうため、あらかじめ許可行政庁に混雑状況を確認しておくなどして、できるだけ空いている時期に提出すると良いでしょう。

なお大臣許可と知事許可では、一般に前者の方が審査期間が長めといわれています。

建設業許可の取得に必要な費用

建設業許可に必要な費用の中でも特に大きいのは、許可行政庁に納める「法定手数料」です。法定手数料は許可の種類によって以下のように変わります。

許可の種類一般建設業か特定建設業のどちらかを取得一般建設業と特定建設業を同時に取得
大臣許可15万円30万円
知事許可9万円18万円

このほかにも「登記事項証明書」など、各種必要書類を揃えるために3000円程度の実費が必要です。申請手続きを行政書士に依頼する場合は、行政書士への報酬も発生します(平均的な報酬額は、大臣許可で20万円前後、知事許可で10万円前後です)。

なお法定手数料の納入方法はさまざまです。大臣許可の場合は税務署への直接納入や日本銀行・日本銀行歳入代理店・ゆうちょ銀行からの納入、知事許可の場合は現金での納入や収入印紙での納入といった具合に、許可行政庁によって変わります。

建設業許可の有効期限

建設業許可の有効期限は「5年」です。許可を継続するには、有効期間の満了する30日前までに更新の申請を行う必要があります。

詳しくは、『建設業許可の有効期限とは?更新手続についても解説』の記事をぜひご覧ください。

まとめ

今回は複雑な「建設業許可」制度について説明しました。これから建設業を始める方、すでに建設業を営んでいて建設業許可の新規申請を考えている方は、許可を受けるための5つの要件や手続きの流れをしっかり理解して、スムーズな許可申請を目指してください。

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