監理技術者補佐のメリットとは?資格要件や注意点についてわかりやすく解説

2020年の建設業法改正によって誕生した「監理技術者補佐」制度。この記事では制度の概要とメリット、監理技術者補佐を活用するための要件についてわかりやすく解説していきます。

監理技術者補佐とは

監理技術者補佐とは、その名の通り監理技術者の補佐役として設置される人のことです。建設業法第26条第3項には次のように規定されています。

公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。
ただし、監理技術者にあつては、発注者から直接当該建設工事を請け負つた特定建設業者が、当該監理技術者の行うべき第26条の4第1項に規定する職務を補佐する者として、当該建設工事に関し第15条第2号イ、ロ又はハに該当する者に準ずる者として政令で定める者を当該工事現場に専任で置くときは、この限りでない。

「第26条の4第1項に規定する職務(監理技術者の行うべき職務)」とは以下のようなものです。

  • 施工計画の作成
  • 工程管理
  • 品質管理
  • その他の技術上の管理
  • 施工に従事する者の技術上の指導監督

これらの職務を監理技術者補佐が補佐することで、監理技術者は複数(現在は2つまで)の工事現場を兼任できるようになります。

監理技術者の業務や要件についての詳しい内容は『主任技術者・監理技術者とは?資格・要件・役割などの違いのわかりやすいまとめ』『監理技術者を更新するには?有効期限が切れた場合についても解説』もお読みください。

2020年の法律改正で新設

監理技術者補佐の制度は、2020年10月1日の「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」の一部施行によって新設されました。

監理技術者補佐の目的とメリット

この法改正の背景にあるのは、建設業界全体に共通する人材不足です。

法改正以前の制度では、監理技術者が他の工事現場を兼任することは認められていませんでした。大規模な工事を行う建設事業者は工事現場ごとに別々の監理技術者を用意する必要がありましたが、監理技術者になるには高度な資格や実務経験が求められ、しかも正社員として直接雇用しなくてはなりません。

慢性的な人手不足が続く建設業界にあって、監理技術者に就任できる人材(有資格者)の数には限りがあります。これらの貴重な人材を有効活用して、建設事業者の負担を少しでも軽くすることが新制度の目的です。

関連記事『専任義務があった「監理技術者」が兼任OKに緩和!変更点や条件を詳しく解説

なお監理技術者補佐の設置によって兼業が認められる管理技術者は「特例監理技術者」と呼ばれます。

監理技術者補佐の要件

監理技術者補佐になるためには一定の資格が必要です。具体的な資格要件については、建設業法を施工するための細かなルールを定めた「建設業法施行令」に規定されています。

建設業法施行令第28条
法第26条第3項ただし書の政令で定める者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
1 法第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者のうち、法第26条の4第1項に規定する技術上の管理及び指導監督であつて監理技術者がその職務として行うべきものに係る基礎的な知識及び能力を有すると認められる者として、建設工事の種類に応じ国土交通大臣が定める要件に該当する者
2 国土交通大臣が前号に掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者

もう少しわかりやすくまとめると、

  1. 当該工事の主任技術者の資格(建設業法第7条第2号イ、ロ、ハに該当)+1級技士補の資格(技術検定の第一次検定に合格)
  2. 監理技術者の資格(一級施工管理技士等の国家資格、一定以上の学歴や実務経験)

のいずれかが必要です。

「主任技術者」の資格について

主任技術者の資格については、建設業法第7条第2号の中で次の3つが指定されています(条文より一部抜粋)。

イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、高校もしくは中学校を卒業して5年以上、または大学・短大を卒業して3年以上の実務経験がある者
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、10年以上実務経験がある者
ハ 国土交通大臣が認定した者

主任技術者になるために上記以外の資格は特に必要ありません。

「1級技士補」について

1級技士補というのは、国土交通省が実施する「技術検定」で第一次検定に合格した人のことです。

技術検定はこれまで学科試験と実地試験の二つに分かれていましたが、2021年4月1日の改正で学科試験が「第一次検定」、実地試験が「第二次検定」に変わりました。旧制度の技術検定では学科試験だけに合格しても資格は与えられませんでしたが、新制度の第一次検定では、合格者に「技士補」の資格が与えられます。

なお技術検定には1級と2級があり、それぞれ第一次検定に合格すると「1級技士補」「2級技士補」となります。監理技術者補佐になれるのは、あくまで1級技士補の方です。

特例監理技術者を配置できる工事について

特例監理技術者(監理技術者補佐の設置によって複数の工事現場を兼任できるようになった監理技術者)を配置できる工事については、いくつかの制限があります。

工事件数

まず兼任できる工事の数は「2」です。建設業法と建設業法施行令では、それぞれ次のように規定されています。

建築業法第26条第4項
前項ただし書の規定は、同項ただし書の工事現場の数が、同一の特例監理技術者(同項ただし書の規定の適用を受ける監理技術者をいう。次項において同じ。)がその行うべき各工事現場に係る第26条の4第1項に規定する職務を行つたとしてもその適切な実施に支障を生ずるおそれがないものとして政令で定める数を超えるときは、適用しない。
建設業法施行令第29条
法第26条第4項の政令で定める数は、2とする。

政令は今後改正される可能性もありますが、現時点では「兼任できる工事現場は2か所まで」と覚えておいてください。

対象工事

特例監理技術者を配置できるのは、監理技術者補佐が配置されている工事現場です。監理技術者補佐と特例監理技術者は「セット」となるため、仮に同じ事業者の他の工事現場に監理技術者補佐がいたとしても、その工事現場に監理技術者補佐が専任されていない限り工事現場の兼任はできません。

対象業種

対象となる工事は全業種です(業種による制限はありません)。

自治体によって制限されることも

なお各種条件を満たしていても、自治体によっては一部の工事について監理技術者の兼任を制限していることがあります。もし発注者(自治体)が「この工事では特例監理技術者の配置はしない」というような条件を設けている場合、特例監理技術者は配置できません。

どのような場合に特例監理技術者を制限するかは自治体の判断によりますが、たとえば「高度な技術を要する等、工事の品質確保の観点から監理技術者の専任が必要と判断される工事については兼務を認めない」としている自治体もあります。

まとめ

監理技術者補佐と特例監理技術者は、建設業界の人手不足を緩和して負担を軽減するために設けられた制度です。人材確保が困難な事業者でも、制度を上手に活用すれば事業拡大につなげることができます。ぜひこの記事を参考に、監理技術者補佐の活用を目指してみてください。

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