経審の点数をアップさせるには?5つの評点を上げるコツや資格について解説

公共工事の入札に参加する事業者は、必ず経審(経営事項審査)を受ける必要があります。

経審では事業者の経営状態や技術力などが点数化されますが、この記事では経審の点数の仕組みについての概要と、点数を上げるためのポイントについてわかりやすく解説していきます。

経審(経営事項審査)とは

経審(経営事項審査)とは、建設業者の「経営規模・経営状態・技術力・その他の項目」について、29の業種ごとに総合的・客観的に評価する制度です。

公共工事の入札に参加しようとする事業者は、それぞれの許可業種ごとに経審を受けなくてはなりません。

建設業法第27条の23
1. 公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。

2. 前項の審査(以下「経営事項審査」という。)は、次に掲げる事項について、数値による評価をすることにより行うものとする。
 一 経営状況
 二 経営規模、技術的能力その他の

3.前号に掲げる事項以外の客観的事項前項に定めるもののほか、経営事項審査の項目及び基準は、中央建設業審議会の意見を聴いて国土交通大臣が定める。

ちなみに経審の「審査基準日」は、申請日の直前の事業年度終了日(直前の決算日)となっています。

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経審の点数はどうやって決まる?

経審の点数はさまざまな要素に複雑な計算式を当てはめて計算します。ここではまず基本となる計算式と、計算式を構成する各要素について簡単に説明します。

点数計算の基本

一般に経審の点数とは「総合評定値(P点)」のことです。P点は「評点」と呼ばれる要素に対し、決まった掛け率を当てはめて算出します。

P点の計算式

P点=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.2+Z×0.25+W×0.15

上の式にあるX1、X2、Y、Z、Wという5つの要素が評点です。

X1(完成工事高評点)

X1点は経営規模を表す指標のひとつで、全体の25%を占める重要な要素です。

内容としては業種別の完成工事高を1,000万円未満〜1,000億円以上までの42区分に分けて、 建設業業種区分ごとに評点を計算します。計算に使うのは「完成工事高評点X1算出テーブル」です。

X2(経営規模評点)

X2点も経営規模を表す指標で、全体の15%を占めます。

こちらは「自己資本額算出テーブル(X21)」と「平均利益額算出テーブル(X22)」を使い、「自己資本額点数」と「平均利益額点数」から点数を計算します。

Y(経営状況評点)

Y点は経営状況を表す指標で、全体の20%を占めます。

計算の基礎となるのは「建設業財務諸表」の数値ですが、建設業財務諸表は(税理士などが作成する)一般的な財務諸表と内容が多少異なるため、作成の際は注意が必要です。

Z(技術力評点)

Z点は技術力を表す指標で、全体の25%を占める重要な要素です。

技術職員が保持している資格の種類や資格者の人数、元請完成工事高に基づいて計算します。

W(社会性等評点)

W点は「その他の審査項目(社会性等)」で、全体の15%を占めます。

具体的には、

  • 労働福祉点数
  • 営業継続点数
  • 防災協定点数
  • 法令遵守点数
  • 建設業経理点数
  • 研究開発点数
  • 建設機械保有点数
  • 国際標準化機構登録点数
  • 若年技術者育成確保状況点数

の各点数を合計し、その値に基づいて事業者の社会的貢献度などを評価します。

経審の点数をアップさせるポイント

各評点の点数は「算出テーブル」と呼ばれる表や細かな計算式によって計算されますが、いくつかのポイントを押さえておけば点数の底上げや大幅アップが期待できます。

X点のポイントは「2年平均 or 3年平均」

X点(X1、X2)のベースとなる「完成工事高」「自己資本額」「平均利益額」は、いずれも短期的な大幅アップを狙える数字ではありません

ただし完成工事高については、2年平均か3年平均のいずれかを選択して平均値を計算することになっています。つまりこういうことです。

  1. 「直前決算」と「前期決算」の完成工事高を平均する
  2. 「直前決算」と「前期決算」と「前々期決算」の完成工事高を平均する

仮に直前決算が「500万円」、前期決算が「400万円」、前々期決算が「300万円」だった場合、①なら「(500+400)/2=450万円」、②なら「(500+400+300)/3=400万円」となります。この場合は①、つまり2年平均を選択したほうが有利です。

ただし複数の業種で経審を受ける場合、選択した「2年平均」もしくは「3年平均」はすべての業種に適用されます(業種によって都合の良い方を選ぶことはできません)。

どちらを選択すれば「全体として」有利になるのか細かくシミュレーションしたり、公共工事の受注でどの業種を重視するのかをよく考えて決める必要があるでしょう。

それともうひとつ、完成工事高を上げようとして利益が薄い工事や赤字工事を受注するのは考えものです。たしかに完成工事高が上がればX1の数字は高くなりますが、一方で財務内容が悪化するためYの数字が低くなり、全体としてマイナスになる可能性も否定できません。

Y点は「決算書の作り変え」に注意

Y点のベースとなる「建設業財務諸表」は(税理士などが作成した)決算書から転記する形で作成、つまり「作り変える」のが一般的でしょう。しかしすでに説明した通り、建設業財務諸表と一般的な財務諸表は細かい部分で異なります。

たとえば一般的な財務諸表で「売掛金」とされている金額のうち、建設業(工事)にかかる売掛金は「完成工事未収金」として計上する、といった具合です(建設業以外の兼業事業にかかるものは、そのまま「売掛金」とします)。

一般的な財務諸表建設業財務諸表
売掛金完成工事未収金
仕掛品未成工事支出金
買掛金・未払金工事未払金
前受金未成工事受入金
売上高完成工事高
売上原価完成工事原価
売上総利益完成工事総利益

なお、別の注意点(工夫できる点)としては以下も挙げられます。

  • 受取利息は「雑収入」ではなく「受取利息」とする(受取利息は多い方が良いため)
  • 経費は可能な限り「原価」ではなく「一般管理費」とする(売上総利益を高くするため)
  • 資本金を可能な限り増やしておく
  • 借入金をできるだけ返済して負債を減らしておく
  • 固定資産をできるだけ減らしておく(リースなどを活用する)

ポイントは、収入や支出の内訳を精査して「正確に」記載することと(虚偽記載はもちろんNG)、財務状況を改善するためにできる限りの手を打つことです。

Z点は「資格の管理」が重要

Z点を加点するポイントは、技術職員の資格をしっかり把握しておくことです。資格者ごとの評価(加点)は次のようになっています。

  • 一級技術者&監理技術者講習受講者:6点
  • 一級技術者:5点
  • 基幹技能者:3点
  • 二級技術者:2点
  • その他の技術者:1点

まず確実にやっておきたいのは、一級技術者に「監理技術者講習」を受講させることです。たった1日の講習を受講して、事務手続きをするだけでZ点は確実にアップします。

ただし監理技術者講習の有効期間は5年間なので、審査基準日の時点で期限切れになっていることがないよう、常に管理を怠らないようにしましょう。

次に、技術職員の適切な振分けにも注意が必要です。実は一人の技術職員が複数業種の資格を持っていても、一人あたり「2業種まで」しか評価の対象となりません。もし3業種以上の資格を持っているなら、申請対象の業種についてしっかり検討する必要があります。

Z点をアップさせるために「新たに資格を取得させる」「上位の資格を取得する」ことを推奨したり、資格保有者を採用するのも効果的です。

ただし新規採用の場合は6か月を超える雇用関係が必要となるため、経審を受けるタイミングをよく考える必要があります。また雇用にかかるコストや資格手当が「加点に見合っているか」もしっかり検討してください。

なおZ点には「元請完成工事高」も関係しているため、公共工事、民間工事に限らず元請工事の受注をできるだけ増やすのも効果的です。

W点は加点・減点の幅が大きい

他の評点と違い、W点は業種とリンクしていません。つまりどの業種で経審を受ける事業者にとっても大幅な点数アップのチャンスです。

一方、押さえるべきポイントを外してしまうと大幅な減点につながることもあります。加点と減点の振り幅が大きいという意味でも、すべての事業者にとって注目すべき要素といえるでしょう。

まず「3種の社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金保険)」については加入が必須です。もし未加入なら、1種あたり40点の減点になります。

次に「建設業退職金共済の加入」「法定外労災保険の加入」「退職一時金制度等の設置」については、それぞれ21点の加点です。とはいえ、ただ加入(設置)さえすればOKというわけではなく、加入に伴う証紙の購入や手帳の更新、毎年の契約更改なども忘れずに行う必要があります。

まとめ

経審の点数(P点)にはX1点・X2点・Z点・Y点・W点という5つの要素が複雑に関係しており、計算方法も複雑です。今回は各要素ごとにおおまかな加点のポイントを紹介しましたが、どの要素を加点できるかは事業者の経営状況や社内事情によって変化します。公共工事の入札に向けて経審を受ける場合はそれぞれの要素を細かく検討してシミュレーションを行い、「最も有利な条件」で申請を行うようにしてください。

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