業界記事

〈連載②〉 『激化する豪雨と戦う地域建設業』「誇りと使命感を胸に行動」

2016-08-31

 豪雨による河川の洪水の現場で、地域の建設業はどう戦っているのか―。五霞建設(茨城県)の菊地和幸社長が2015年9月に発生した関東・東北豪雨による鬼怒川洪水と宮戸川の災害復旧について報告した。また、新井組(岐阜県)の新井裕輔社長が、14年8月の高山豪雨で経験した、中山間地での河川氾濫と土砂流出への対応について話した。
 15年9月、茨城県や栃木県などの上空に線上降水帯が発生した。これまで経験したことのない400ミリ以上の豪雨により、眠れないほどのごう音が一晩中続いた。「至る所で道路が冠水し、パトロールも困難な状況だった」と五霞建設の菊地社長は振り返った。
 同社が担当した宮戸川の応急復旧では、決壊した堤防の幅が狭く、重機を搬入できなかったため、対岸から大型クレーンを使い、鋼矢板で止水した。洗掘の深さが不明で、矢板の長さが決められないため、陸に杭を打って体とロープで結び、棒を使って洗掘の深さを測定したという。
 今回、同社は、SNSのフェイスブックによる現場からの情報発信を試みた。市民からは「大変でしょうが、がんばってください」「本当に尊敬しています」といった声が寄せられた。
 SNSによる情報発信の利点について菊地社長は「状況や活動をリアルタイムで伝えることができる」「市民からの声を聞くことができる」「情報伝達ツールとして活用できる」ことなどを挙げた。一方、問題点として「マイナス情報の発信」「個人情報保護の担保」「現場での事故や失敗を発信してしまう可能性」などを指摘した。
 菊地氏は「自分たちも被災者だが、地域で資材や技術を持って対応できるのは建設業しかいない。この使命は、絶対に忘れてはならない」と強調した。
  ◇     ◇
 東京23区に匹敵する広大な面積を有する岐阜県高山市。14年8月中旬、同市を記録的な豪雨が襲った。河川の氾濫や土砂流出が各所で発生。道路でも、同市清見町の通称「せせらぎ街道」を中心に被害が多発し、宮前橋など2橋が流出した。
 高山建設業協会から宮前橋の仮設橋梁架設工事に派遣された新井組は、実質2日間で仮設橋と、その周囲の緊急復旧工事を完了させた。
 新井組の新井社長は、早期に仮設橋の架設を実現できた要因として「国と県、市の行政間の連携がスムーズで、許認可や資機材の無償提供、地権者への説明などが迅速に行われた」ことを挙げた。そして「災害対策本部に高山建設業協会から2人のリエゾンを派遣できたことで、リアルタイムに状況を把握できたことも大きかった」と強調した。
 新井氏は、孤立集落の住民から届いた感謝のメールを紹介しながら、「地域建設業の役割を再認識することができた。今後、社会資本が急速に老朽化することになるが、延命化するための維持・修繕も重要な使命。地域建設業の誇りと役割を胸に刻み、地域活性化のためにも社会貢献していきたい」と決意を述べた。(地方建設専門紙の会)
 

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