国土交通省は技術者を確保・育成し、さらなる活躍を図る観点から技術検定試験の見直しを検討している。9日の中央建設業審議会・社会資本整備審議会の基本問題小委員会で見直しの方向性を示し、2級学科試験の受験機会の年2回化、学科試験合格者に対して「士補」を付与することを視野に入れている。
今月2日に閣議決定した骨太の方針2016では「施工管理技術に関する公的資格試験を年2回にするなど受験機会の拡充について検討する」ことが盛り込まれたところ。
建設業法に基づく技術検定は土木、建築、管工事、電気工事、建設機械、造園の6職種でそれぞれ1級と2級があり、学科試験と実地試験が行われている。近年、担い手確保の必要性が高まる中、技術検定の受験者数は減少し、合格者の高齢化が進んでいる現状がある。
国交省では、まず若年層の受験者が多く、かつ高校在学中の合格者の増加が期待できる2級学科試験について年2回化の検討を進める。対象とする試験科目や導入時期は現時点では未定。
また、学科合格者に対して新たな名称「士補」を与えることで、建設業界に就職する動機付けにしてもらう。今後、導入に向けて実態調査や制度設計などを進める。
さらに1級の学科試験に関しても受験資格要件を緩和し、前倒し受験の実施を検討する見通しだ。
〈記者の眼〉
高齢者の大量離職を控えて深刻な担い手不足が心配される中、技術検定試験の見直しは一定の効果が期待される。ただ試験の年2回化は試験スケジュールの見直しのほか、会場確保や事務量増加に伴い人件費も増えるため、受験料を引き上げざるを得ないなど、課題が多い。
2級の場合は高校生も対象に入るが、工業高校の保護者からは現状でも受験料や問題集の購入費、受験の交通費などで費用が掛かることに不満の声が出ているため、費用負担の増加に関しては特に慎重な検討が必要だろう。学校で試験対策の授業が間に合うのかという問題も切実で、工業高校の教員からは「試験範囲が広いため難易度が高く、現行の文部科学省のカリキュラムでは合格者が出ない」という指摘もある。また試験日と部活動の予定が重なり、試験を辞退した生徒もいることから、学校の実態に合わせた現実的な見直しが求められる。