相見積もりは違法?事業者が公的機関と安全に契約を結ぶには

「公的機関が相見積もりをとると違法になる」…そんな話を耳にしたことがるでしょうか?一般企業同士の契約では一般的な相見積もりですが、公的機関が関係する場合は少し注意が必要です。この記事では、なぜ相見積もりが違法になることがあるのか?公的機関と安全に取引をするにはどうしたらよいのか?という疑問について解説していきます。

「相見積もり」は違法になることがある

建設事業者をはじめ、一般の事業者にとって「相見積もり」はごく普通のビジネス行為です。しかし、こと公的機関において「相見積もり」は危険な行為になる可能性があります

仮に公的機関の相見積もりが違法とされた場合、それに関与した民間企業も何らかの処分やイメージの低下を免れません。このため、まずは相見積もりについて正確に理解しておくことが大切です。

そもそも相見積もりとは

「相見積もり」とは複数の事業者から見積もりを取ることで、最も適切な価格やサービスを選ぶための方法の一つとして広く利用されています。例えば、高額な機械や設備を導入する際は複数のメーカーや商社に見積もりを依頼して、それぞれの価格や提案内容を比較するのが一般的です。このような方法は、消費者や事業者が適切な価格でサービスを受けるための手段として広く認知されています。

公的機関の「相見積もり」は意味が違う?

一方、公的機関で言う「相見積もり」の意味は、上で説明したものとは多少異なります。具体的には、複数の事業者から見積を取るのではなく「複数の見積書を集める」という意味合いです。

  • 民間企業の「見積合わせ」→複数の事業者から見積もりを取ること
  • 公的機関の「見積合わせ」→複数の見積書を集めること

公的機関の見積合は、見積書を集めることが目的となり、その手段(どこから、どうやって見積書を取り寄せるか)は二の次となります。つまり随意契約を結ぶ相手の企業に他社名義の見積書を用意させたり、官製談合を行ってダミーの見積書を提出させる場合も含まれてしまう可能性があるのです。

相見積もりが談合になるケースについて

もちろん、公的機関が見積書をそろえる(相見積もりをする)ことが、直ちに談合などの違法行為になるわけではありません。正当な手続きで、複数の民間業者に見積書を提出させる分には合法です。

しかし見積書の提出前に価格や条件の打合せを行ってしまうと、その行為は談合として扱われる危険があります。2002年に成立した「入札談合等関与行為防止法」によると、談合とみなされる行為は次の通りです。

入札談合等関与行為防止法 第2条第5項
この法律において「入札談合等関与行為」とは、国若しくは地方公共団体の職員又は特定法人の役員若しくは職員(以下「職員」という。)が入札談合等に関与する行為であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
① 事業者又は事業者団体に入札談合等を行わせること。
② 契約の相手方となるべき者をあらかじめ指名することその他特定の者を契約の相手方となるべき者として希望する旨の意向をあらかじめ教示し、又は示唆すること。
③ 入札又は契約に関する情報のうち特定の事業者又は事業者団体が知ることによりこれらの者が入札談合等を行うことが容易となる情報であって秘密として管理されているものを、特定の者に対して教示し、又は示唆すること。
④ 特定の入札談合等に関し、事業者、事業者団体その他の者の明示若しくは黙示の依頼を受け、又はこれらの者に自ら働きかけ、かつ、当該入札談合等を容易にする目的で、職務に反し、入札に参加する者として特定の者を指名し、又はその他の方法により、入札談合等を幇ほう助すること。

上の条文の内容を簡単にまとめると、「談合の指示」「契約者の事前指名」「発注情報の漏えい」「談合の幇助」が談合行為です。仮に公的機関が複数の事業者と事前に発注金額について話し合い、そのうえで見積書の提出を求めた場合は官製談合となります。

相見積もりではなく「見積合わせ」

上で説明した通り一般企業で言う「相見積もり」は、公的機関では「見積合わせ」と呼ばれます。では実際の契約において、見積合わせはどのような場合に利用され、どのようなメリットがあるのでしょうか。

見積合わせと少額随意契約

見積合わせは「少額随意契約」と呼ばれる契約方式で行われます。少額随意契約とは、工事や物品納入などの予定価格が少額の場合に、2社以上から見積書を提出させて直接契約の相手を決める方式です。つまり「見積合わせを前提とする直接契約」といえるでしょう。

見積合わせが行われる案件とは

少額随意契約は、法令の根拠に基づいて行われます

会計法 第29条の3
⑤ 契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、第一項及び第三項の規定にかかわらず、政令の定めるところにより、指名競争に付し又は随意契約によることができる。

具体的な金額については、たとえば物品の購入なら160万円以下(国、都道府県)や80万円以下(市町村)、工事なら250万円以下、役務の提供なら100万円以下といった具合に、法令で決められています。

このような契約では、公的機関は民間の事業者を指名して見積合わせを行い、その内容を比較して契約相手を決めることになります。

見積合わせのメリット

見積合わせを利用する少額随意契約には、手続きの迅速化や、特定の技術の利用、サービスの品質確保など、公的機関にとって多くのメリットがあります。

また民間事業者にとっても、技術や企画力が評価対象になる、価格競争になりにくいため利益を確保できるといった点がメリットです。

見積合わせに参加するには

見積合わせに参加するためには、少額随時契約の流れについて理解しておく必要があります。ここでは発注者となる公的機関側の目線から、見積合わせを含む少額随時契約のステップを紹介します。

Step1 仕様書の作成

見積合わせを行う前に、どのような工事を行うのか、要求される仕様はどのようなものかといった内容を記載した仕様書を作成します。この仕様書は、各企業が見積金額を算出する際の基準となります

Step2 企業の選定

仕様書に基づいて、見積合わせの候補となる企業を選定します。選定方法はさまざまですが、一般には過去に同様の契約実績がある企業や、同様の内容で信頼を置ける地元企業などが選ばれることが多いようです。

Step3 見積書の依頼

選定された企業に対して、見積書の提出を依頼します。依頼方法は電話、メール、FAXなどが一般的です。

Step4 見積合わせ

依頼された企業から見積書が出そろったら、金額だけでなく提案の内容や実現可能性なども比較します。

Step5 結果通知

見積書を比較して契約相手を決めたら、その結果をすべての参加企業に通知します。クレーム対策として、通知の順番は「選ばれなかった企業」を先にするのが一般的です。

関連記事:見積合わせと入札はどう違う?見積合わせのメリットや具体的な流れについて説明 | 入札成功のための基礎知識

まとめ

公的機関との取引では、正しい方法で見積もりを行うことが極めて重要です。「相見積もり」ではなく「見積合わせ」という、用語の使い方にも十分に注意しておきましょう。

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