CLTとはどのような素材?メリット・デメリットや利用事例について解説

建築事業者にとって、また建主に対しさまざまなメリットをもたらしてくれるCTL。この記事では、東京オリンピック関連の建築プロジェクトにも使われたこの新世代の建材について解説していきます。

CLTとは

CLT(クロスラミネーテッドティンバー:Cross Laminated Timber)とは、最近注目を集めている木製建材の一種です。CLTが登場したことにより、都市部でも木材を使用した大規模建築物の建設が現実的になってきました。

CLTの構造

CLTは薄い板状の木材(ひき板)を互い違いに積層させた板です。層ごとに木材の繊維方向が直角になるよう貼り合わされるため「直交集成板」とも呼ばれます。

画像引用元:内閣官房Webサイト

CLTは用途に合わせてさまざまなサイズに調整できますが、一般には平面サイズが最大12m×3m、厚みが36〜300mmの範囲内で製造されます。

CLTの特徴

CLTの特徴は、高い強度を持ちつつ軽量であること、そして取り扱いが容易で、木材特有の美しさや機能(断熱性や湿度調整機能など)を備えていることです。これらの特徴については、後ほど「CLTのメリット」として紹介します。

集成材との違い

CLTと混同されがちな建材が「集成材」です。ここでは集成材とCLTがどのように違うのか説明していきます。

集成材とは

集成材とは、小さな木材を一列に並べ、接着剤で接合した木材製品の一種です。各木材は一般に同じ方向を向いていて、繊維方向の強度に優れています。この特徴を生かし、建築工事では「柱」や「梁」などの軸材として使われるケースが多いようです。

CLTと集成材の比較

CLTと集成材の大きな違いは、強度の方向と生産体制です。

CLTは互い違いの積層構造になっているため、縦横どちらの方向にも高い強度があります。一方、集成材の強度は一方向です。

またCLTの製造プロセスは集成材とは異なり、特定の建築物のためにカスタムメイドされることが一般的です。これに対し集成材は事前に大量生産されることが多く、これがコストダウンにつながっています。

CLTのメリット

CLTの使用には多くのメリットがあります。ここではCLTが建築業界で人気を集めている理由を紹介していきましょう。

強度が高く軽量

CLTは高い強度を持ちながら驚くほど軽量です。このためCLTを使用した建築物では、基礎にかかる負荷を減らすことができます。

また強度と軽量性を両立していることで、従来の木造建築よりも高い建物、大規模な建物の建材として利用することも可能です。

もちろん軽量であることは取り回しの良さに直結します。輸送コストなど、建設プロジェクトで発生する各種コストを引き下げることもCLTのメリットです。

工期の短縮

CLTは工場で事前に製作される「プレハブ」のため、現場での作業が軽減されます。事前に製造したパネルは現場で素早く組み立てることができるため、CLTを使った建築プロジェクトでは工期を劇的に短縮できるのが一般的です。

工期の反収は建設費用の削減につながり、プロジェクトの効率性を向上させるでしょう。

耐震性と耐火性

CLTは各層が互い違いに積層されることで、複数方向に対して高い強度を持つのが特徴です。これは、CLTが地震による揺れにも強いことを意味します。

またCLTは木材でありながら耐火性にも優れています。厚みのあるCLTは、表面近くが焦げて炭化することで内部を保護してくれるためです。

断熱性と吸湿性

CLTは一般的な木材と同様、熱を伝えにくい素材です。また周囲の湿度が高い環境では空気中にある水分を吸収し、乾燥した状況下ではその水分を放出するという特徴があります。

これらの特徴は、光熱費コストの削減につながるでしょう。

SDGsへの貢献

CLTの生産と使用は、環境にやさしい建築の実現に向けた重要なステップです。木材は成長過程でCO2を吸収し、CLT製品としてそのCO2を長期間保持します。このため木材であるCLTは、温暖化ガスの排出削減に大きく貢献すると期待されています。

また持続可能に管理された森林からの木材を使用することで、生物多様性の保護と森林の健全な維持管理にも寄与します。これらの特性は、CLTがSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた素晴らしい選択肢となっています。

CLTのデメリット

一方、CLTには決していくつかの課題もあります。

価格の問題

CLTはその優れた特性に反して、比較的高価な材料です。これは製造過程が複雑であることと関係があります。

しかしCLTにはさまざまなメリットがあるため、長期的な観点から見れば、初期投資の高さを建物の運用(たとえば光熱費コストの削減)を通して相殺可能です。

供給の問題

CLTのもう一つの課題は供給の問題です。CLTの本場・ヨーロッパでは一般的な素材として「トウヒ」が使われますが、日本では「スギ」が主流です。水分を多く含むスギは乾燥に手間がかかるため、CLTを国産材のみで作ることは今のところ困難です。

もっとも技術の進歩などにより、こうした問題はいずれ解消されていくかもしれません。

CLT工法に使える補助金・助成金

『CLT活用建築物等実証事業』

林野庁のCLT活用建築物等実証事業(令和5年度 CLT活用建築物等実証事業)は、CLTを建築物に活用する建築主等に対する助成事業です。

助成の対象

  1. CLTを活用した建築物の設計・建築又は部材の性能の実証
  2. 街づくり(隣接・近接箇所に複数の CLT 建築物等を設計・建築)の実証
  3. CLT製造企業との連携を通し、CLTを低コストで安定的に供給するためのモデル的な取組み

助成割合・助成額

  • 経費の3/10または1/2を上限に助成
  • 助成額の上限は85万円程度

『サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)及び優良木造建築物等整備推進事業』

令和5年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)及び優良木造建築物等整備推進事業は、「住宅・建築物の木造化に係る先導的な技術の普及啓発に寄与する木造建築物」と「普及拡大段階の木造化技術を活用した木造建築物の整備を行う優良木造建築物」の整備を行うプロジェクトを補助する事業です。

補助の内容

  •  木造先導事業:採択1案件につき500万円を上限に、調査設計計画費、建設工事費、技術の検証費、附帯事務費(人件費、旅費、一般管理費等)などを補助
  • 優良木造事業:採択1案件につき300万円を上限に、調査設計計画費、建設工事費(木造化しない場合の建設工事費との差額の1/3以内)を補助

なお調査設計計画費は「費用の1/2以内」、建設工事費は「木造化しない場合の建設工事費との差額の1/3以内」など、補助割合に注意が必要です。

また助成事業は応募期間が限られています。また応募のタイミングによって募集内容が修正される可能性があるため、応募を検討する際は注意してください。

CLTの活用事例

最後に、実際にCLTを利用している建設プロジェクトを紹介します。

国立競技場|東京都

東京オリンピック2020に合わせて立て替えが行われ、オリンピックのメイン会場となった国立競技場。「神宮の杜(もり)と調和する市民に開かれた杜のスタジアム」というコンセプトのもと、約2,000立方メートルという大量の木材を使用しているのが特徴です。

国立競技場の中でCLTを使用している場所は、選⼿更⾐室内のロッカーや休憩スペースのベンチ、屋外エレベーターの外壁など。いずれも強度の強い国産材のCLTを使用しています。

画像引用元:林野庁Webサイト

塩尻市北部交流センターえんてらす|長野県

塩尻市北部交流センターえんてらすは、長野県塩尻市の支所や公民館、図書館子育て支援施設を兼ねた総合施設です。

CLTを使用しているのは子育て支援事業を行うプレイルームの「壁」。しっかりとした強度を保ちつつ、木の香りと温もりを感じられる雰囲気になっています。塩尻市産カラマツ100%を使ったCLTという、地産地消の取り組みも注目ポイントです。

まとめ

CLTは建築主にとっても、地域にとってもメリットのある建材です。日本でも公共施設などに使用する事例が増えており、今後は民間を含めてさらに利用拡大していくことでしょう。ぜひ助成制度や補助制度などを活用して、CLTを積極的に使っていきましょう。

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