PFIとはどのようなもの?具体的な内容や成功事例をわかりやすく解説

公共事業に民間資金を投入することで、効率的・持続的な事業運営を可能にするPFI

もともとはイギリスで生まれた手法ですが、日本でも全国の自治体で活用が進められています。本記事では日本におけるPFIの具体的な内容や事例を紹介します。

PFIとは

PFI(Private Finance Initiative)は、民間資金を活用して公共事業を実施する手法の一つです。PFIでは民間企業が公共工事の発注者(地方公共団体)と提携して、建設・運営・管理などの業務を行いながら、一定期間にわたって事業の収益を得ます。

PFIはもともと1990年代前半にイギリスで生まれた手法です。日本では法整備や内閣総理大臣による基本方針の策定を経て、2000年頃から活用が始まっています。

PFIの目的

PFIの主な目的は、公共部門の資金不足や技術的な限界を克服し、効率的で持続可能な公共施設の整備・運営を実現することです。具体的には、以下のような目的があります。

資金調達の多様化

公共部門は、予算の制約や財政難に直面することがあります。PFIを活用することで、民間の資金力を活かし、公共施設の整備・運営に必要な資金を確保することができます。

高品質なサービスの提供

PFIでは、民間企業が専門知識や技術を持ちながら、公共施設の建設・運営を行います。これにより、民間の効率性やイノベーションが導入され、高品質なサービスが提供されることが期待されます。

リスク分担と効率化

PFIでは、民間企業がリスクを分担することが求められます。建設や運営に関するリスクを民間が負担することで、公共部門はリスクを軽減することができます。

また、民間の経営手法や効率化の取り組みが導入されることで、公共施設の運営コストを削減することも可能です。

日本におけるPFI

日本では1999年(平成11年)に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)を制定、その翌年にPFIの理念とその実現のための方法を示す「基本方針」が策定され、その後PFIに関する5つのガイドラインが順次公表されています。

日本においてPFIが活用されている主な分野は以下の通りです。

道路・交通インフラ

高速道路や道路改修などの交通インフラ整備において、PFIが活用されています。民間企業が道路の建設・運営を行い、利用者に対して高品質なサービスを提供しています。

教育施設

学校や大学の建設・運営においてもPFIが利用されています。民間企業が教育施設の整備や維持管理を行い、教育環境の向上や効率的な運営を実現しています。

医療施設

病院や介護施設などの医療施設においても、PFIが導入されています。民間企業が施設の建設や医療機器の導入、運営管理を行い、医療サービスの質の向上や経営の効率化を図っています。

水道・下水道施設

水道・下水道の整備や運営においてもPFIが利用されています。民間企業が施設の建設や設備の更新、維持管理を行い、安定的な水道・下水道サービスを提供しています。

なお内閣府の関連サイト上では、2022年(令和4年)3月31日の時点で898件のPFI事例が公開されています。

参考:民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室) – 内閣府

PFIの種類

PFIには、PPP(Public-Private Partnership)と民営化の2つの主要な形態があります。また、PFIの事業方式にもいくつかのバリエーションが存在します。

PFIとPPP

PPPは、公共部門と民間企業が連携し、共同で公共施設の整備・運営を行う形態です。公共部門が土地や施設の提供を行い、民間企業が資金や技術を投入して建設・運営を行います。PPPでは、リスクと利益を公共部門と民間企業が共有し、効率的なプロジェクトの実現を目指します。

PFIと民営化

民営化は、公共施設や公共サービスを完全に民間企業に移管する形態です。一方、PFIは公共部門と民間企業の連携により、資金や技術の提供を受けながら公共施設の整備・運営を行います。

PFIの事業方式

PFIの事業方式には、以下のようなバリエーションが存在します。

BTO(Build・Transfer・Operate)方式:民間企業が施設の建設を行い、完成後に公共部門に移管し、その後一定期間にわたって運営を担当する方式です。

BOT(Build・Operate・Transfer)方式:民間企業が施設の建設と運営を行い、一定期間後に公共部門に施設を移管する方式です。民間企業は建設・運営費用を負担し、利益を得ます。

BOO(Build・Own・Operate)方式:民間企業が施設の建設と所有、そして運営を行う方式です。一定期間の運営後、施設は公共部門に売却されることがあります。

BLO(Build・Lease・Operate)方式:民間企業が施設の建設と所有を行い、公共部門に対して一定期間のリース契約を提供し、運営を担当する方式です。

BLT(Build・Lease・Transfer)方式:民間企業が施設の建設と所有を行い、公共部門に対して一定期間のリース契約を提供した後、契約期間終了時に施設を公共部門に移管する方式です。

DBO(Design・Build・Operate)方式:民間企業が施設の設計、建設、そして運営を一貫して行う方式です。設計・建設の段階から運営までを包括的に担当し、効率的な施設の整備・運営を実現します。

PFIのメリット・デメリット

PFIを活用することには、以下のようなメリットとデメリットが存在します。

メリット

資金調達の多様化

PFIは民間資金を活用するため、公共部門の予算制約を緩和し、大規模な公共施設の整備・運営が可能となります。

高品質なサービスの提供

民間企業の専門知識や技術を活用することで、公共施設の品質や効率性が向上します。民間のイノベーションや効率化手法を導入することで、利用者にとってより良いサービスが提供されます。

リスク分担と効率化

PFIでは、民間企業が建設や運営に関わるリスクを負担するため、公共部門のリスクが軽減されます。また、民間企業の経営手法や効率化の取り組みが導入されることで、公共施設の運営コストを削減し、効率的な運営が実現されます。

経済的効果の創出

PFIにより、民間企業の参入や事業の活性化が促進されます。これにより、雇用創出や地域経済の活性化などの経済的な効果が生まれる場合があります。

デメリット

長期契約のリスク

PFIは一定期間にわたる契約形態であり、公共部門が長期間にわたって契約を維持する必要があります。契約条件の変更や不適切な契約内容により、公共部門に不利益が生じる可能性があります。

私的な利益追求の懸念

PFIでは、民間企業が利益を追求することが前提となります。そのため、公共利益や利用者のニーズとのバランスが損なわれる可能性があります。

契約管理の複雑さ

PFIは複数の契約関係が絡み合うため、契約の管理が複雑化する場合があります。適切な契約管理体制を整える必要があります。

公共性の低下の懸念

PFIによって公共施設が民間の所有となる場合、公共性が低下する懸念があります。利用料の値上げやサービスの質の低下などが起こる可能性があります。

PFIの成功事例

PFIはさまざまな地域・分野で活用され、その多くが成功を収めています。ここでは内閣府が公開している事例から2例をピックアップしました。

この他の事例についても、ぜひ『PPP/PFI事例集』から確認してみてください。

『柳島スポーツ公園』

柳島スポーツ公園整備事業は茅ヶ崎市(神奈川県)が事業主体となり、PFI(BTO)方式で民間事業者に運営を委託しています。事業機関は2014年12月〜2038年年3月までの23年3か月です。

すでに施設は2018年に開園し、現在は受託事業者による「地元中心の業務実施体制」のもと、積極的な地元在住者の雇用確保、県産材の採用、地域活性化への貢献つながっています。また「シンボリックなクラブハウスの設置」と「地域スポーツコミュニティの形成」という、ハードとソフトが調和した一体的な施設利用がおこなわれています。

『桜ヶ丘子育て支援住宅』

桜ヶ丘子育て支援住宅整備事業は鹿屋市(鹿児島県)が事業主体となり、PFI(BTO)方式で民間事業者に賃貸住宅整備と付帯設備の運営を委託しています。事業機関は2016年〜2048年までの31年間です。

住宅の完成・引渡しは2018年に行われており、現在は民間の放課後学童施設(アフタースクール)や、子育て世帯を対象としたママカフェ等の誘致が行われています。これらの事業収入によりサービス対価や大規模修繕費用がまかなわれるため、市の財政負担が発生しない仕組みです。また地元企業の事業機会創出や、企業育成にもつながると期待されています。

まとめ

PFIは公共部門と民間企業の連携により、資金や専門知識を結集し、効率的な公共施設の整備・運営を実現する手法です。適切なプロジェクト選定や契約管理の強化により、PFIは公共部門や民間企業、そして利用者にとって共にメリットをもたらす有効な手段となることが期待できるでしょう。

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