公共工事の入札に必要な「入札保証金」と「契約保証金」とは?

入札の手続きには「契約保証金」や「入札保証金」が付き物です。一定の条件付きで納付が免除されるケースもありますが、原則として、保証金を納付しないと入札に参加したり発注者と契約を結ぶことはできません。

今回は「契約保証金」と「入札保証金」について、それぞれの制度の目的や具体的な支払い方法、免除の条件までわかりやすく説明します。

ただし、実際の細かいルールは発注者によって異なっているため、実際に入札に参加する際には発注者にお問い合わせ下さい。

「契約保証金」とは

契約保証金とは、「確実な契約履行の担保」として落札者が発注者に支払う「金銭的保証」です。保証金は履行完了後に返還されますが、もしも落札者が契約を履行しなかった場合には「発注者が被る損害の補償」や「違約金」として没収されます。

契約保証金の金額は、原則として「契約金額の10%以上」です。契約変更によって契約金額が増額した場合は増額分を追加納付し、減額した場合は減額もしくは返還されることになります。

契約保証金の根拠となっているのは以下の法律です(国の場合は「会計法」、地方公共団体の場合は「地方自治法」「地方自治法施行令」)。

会計法 第29条の9
契約担当官等は、国と契約を結ぶ者をして、契約金額の百分の十以上の契約保証金を納めさせなければならない。ただし、他の法令に基づき延納が認められる場合において、確実な担保が提供されるとき、その者が物品の売払代金を即納する場合その他政令で定める場合においては、その全部又は一部を納めさせないことができる。

会計法 第29条の10
前条の規定により納付された契約保証金(その納付に代えて提供された担保を含む。)は、これを納付した者がその契約上の義務を履行しないときは、国庫に帰属するものとする。ただし、損害の賠償又は違約金について契約で別段の定めをしたときは、その定めたところによるものとする。

地方自治法施行令 第167条の16
普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体と契約を締結する者をして当該普通地方公共団体の規則で定める率又は額の契約保証金を納めさせなければならない。

地方自治法 第234条の2 第2項
普通地方公共団体が契約の相手方をして契約保証金を納付させた場合において、契約の相手方が契約上の義務を履行しないときは、その契約保証金(政令の定めるところによりその納付に代えて提供された担保を含む。)は、当該普通地方公共団体に帰属するものとする。ただし、損害の賠償又は違約金について契約で別段の定めをしたときは、その定めたところによるものとする。

契約保証金の払い方・納付期限

契約保証金には二つの種類があります。

①現金
発注者の窓口に持参するほか、指定金融機関の窓口で納付したり、指定口座へ振り込むなどの方法で支払います。

②有価証券
有価証券には、国債、地方債、独立行政法人などが発行する債権、保証手形、小切手、定期預金債権などさまざまな種類があります。

契約保証金として利用できる有価証券には条件(たとえば小切手の場合、振出人や支払人の名義、支払いの方法、支払呈示期間など)が設定されることもあるため、発注者ごとに確認が必要です。

いずれの方法も、納付期限は契約予定日以前となります。

契約保証金が免除になる条件とは?根拠法令も解説

一定の条件を満たすと契約保証金の全部または一部が免除されるケースがあります。国の入札案件の場合、その根拠となるのは契約保証金について定めた「会計法 第29条の9」のただし書き部分です。

会計法 第29条の9(ただし書きのみ)
ただし、他の法令に基づき延納が認められる場合において、確実な担保が提供されるとき、その者が物品の売払代金を即納する場合その他政令で定める場合においては、その全部又は一部を納めさせないことができる。

免除の条件は、主に「確実な担保が提供されるとき」と「物品の売払代金を即納する場合」です。後者は売払い契約などに適用される要件なので、ここでは公共工事などの請負契約に当てはまる「確実な担保」について説明します。

確実な担保とは、具体的には「前払金保証事業会社の保証」「銀行等の保証」「保険会社との履行保証保険契約」などです。履行保証保険については、後ほどあらためて説明します。

地方公共団体の場合は、契約金額が「500万円未満」の場合に契約保証金を免除するケースが一般的です。500万円未満であればほぼ無条件で免除する自治体も少なくありませんが(例:牛久市など)、なかには追加の要件を規定しているところもあります。

一例として長野県のケースの「財務規則」について解説します(参考:長野県「建設工事等に係る入札保証金・契約保証金の取扱について」)。

財務規則第143条第3号
契約人が、過去2年間に国若しくは地方公共団体と種類及び規模をほぼ同じくする契約を2回以上にわたって誠実に履行した実績を有する者であり、かつ、当該契約を確実に履行するものと認められるとき。

この規定によると、

  1. 過去2年以内に
  2. 国もしくは地方公共団体と
  3. 種類と規模がほぼ同じ契約を
  4. 2回以上
  5. 誠実に履行

していることが免除の要件となります。

ちなみに「種類」というのは、建設工事、建築工事、森林整備、建設工事等に係るコンサルタント等の業務の4種類です。「規模がほぼ同じ」かどうかは「契約金額の70%を下限に発注機関の長が認めた額」で判断し、「誠実に履行」しているかどうかは、原則としてCORINS登録やTECRIS登録で確認します。

これはあくまで長野県の例です。ただし他の自治体でも同様の基準で契約保証金を免除している可能性もあるため、入札する際はあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

「入札保証金」とは

入札保証金とは、落札後の「確実な契約締結を担保」として入札者が発注者に支払う「金銭的保証」です。入札者が落札できなかった場合は返還されますが、落札者が何らかの理由で契約締結しなかった場合には「発注者が被る損害の補償」や「違約金」として没収されます。なお契約を締結した場合は、入札保証金が契約保証金の一部として充当されるのが一般的です。

入札保証金の金額は、原則として「入札金額の5%以上」です。

入札保証金の根拠となっているのは以下の法律です(国の場合は「会計法」、地方公共団体の場合は「地方自治法」「地方自治法施行令」)。

会計法 第29条の4
契約担当官等は、前条第1項、第3項又は第5項の規定により競争に付そうとする場合においては、その競争に加わろうとする者をして、その者の見積る契約金額の百分の五以上の保証金を納めさせなければならない。ただし、その必要がないと認められる場合においては、政令の定めるところにより、その全部又は一部を納めさせないことができる。

会計法 第29条の7
第29条の4の規定により納付された保証金(その納付に代えて提供された担保を含む。)のうち、落札者(前条の規定により契約の相手方とする者をいう。以下次条において同じ。)の納付に係るものは、その者が契約を結ばないときは、国庫に帰属するものとする。

地方自治法施行令 第167条の7
普通地方公共団体は、一般競争入札により契約を締結しようとするときは、入札に参加しようとする者をして当該普通地方公共団体の規則で定める率又は額の入札保証金を納めさせなければならない。2 前項の規定による入札保証金の納付は、国債、地方債その他普通地方公共団体の長が確実と認める担保の提供をもって代えることができる。

地方自治法 第234条 第4項
普通地方公共団体が競争入札につき入札保証金を納付させた場合において、落札者が契約を締結しないときは、その者の納付に係る入札保証金(政令の定めるところによりその納付に代えて提供された担保を含む。)は、当該普通地方公共団体に帰属するものとする。

入札保証金の払い方・納付期限

入札保証金の種類は、契約保証金と同じく「現金」と「有価証券」の2種類です。納付期限は入札公告に定める提出期間内となります。

入札保証金が免除になる条件とは?根拠法令も解説

入札保証金にも免除規定があります。根拠となるのは入札保証金について定めた「会計法 第29条の4」のただし書き部分です。

会計法 第29条の4(ただし書きのみ)
ただし、その必要がないと認められる場合においては、政令の定めるところにより、その全部又は一部を納めさせないことができる。

この中に「政令の定めるところ」という言葉が出てきます。この政令とは、具体的には「予算決算及び会計令(予決令)第77条」です。

予決令第77条
契約担当官等は、会計法第29条の4第1項ただし書の規定により、次に掲げる場合においては、入札保証金の全部又は一部を納めさせないことができる。1 一般競争に参加しようとする者が保険会社との間に国を被保険者とする入札保証保険契約を結んだとき。2 第72第1項の資格を有する者による一般競争に付する場合において、落札者が契約を結ばないこととなるおそれがないと認められるとき。

上記1によると、入札者と保険会社の間で「国を被保険者とする入札保証保険契約」が結ばれている場合は入札保証金が免除されるとあります。

上記2の冒頭にある「第72第1項」というのは以下の規定です。

予決令第72条 第1項
各省各庁の長又はその委任を受けた職員は、必要があるときは、工事、製造、物件の買入れその他についての契約の種類ごとに、その金額等に応じ、工事、製造又は販売等の実績、従業員の数、資本の額その他の経営の規模及び経営の状況に関する事項について一般競争に参加する者に必要な資格を定めることができる。

ここにある「工事、製造、物件の買入れその他についての契約の種類ごとに」定める資格とは、具体的には「全省庁統一資格」です(詳しくは「全省庁統一資格とは?取得すると何ができる?取得手順や等級も解説」も参照してください)。

全省庁統一資格はあくまで「物品の製造・販売」や「役務の提供」の入札資格なので、公共工事の場合は入札保証金の免除要件にならないケースが大半でしょう。

公共工事の「履行保証保険」とは

「履行保証保険」とは主に公共工事の入札案件に関連して、入札者・受注者(落札者)と保険会社の間で結ぶ保険契約です。発注者である国や地方公共団体が保険の受取人となり、入札者や受注者が義務を履行しない場合に発生する損害を補償します。

履行補償保険の保証には「契約保証予約」と「契約保証」のふたつがあります。このうち「契約保証」は契約不履行による損害を補償するもので、契約保証金の代わり(免除要件)となるものです。「契約保証予約」は入札保証金の代わりになります。

なお履行保険の内容には「当初の工事費の残り」を補償するものと、「実際に発生した損害(別の業者に依頼するために発生した費用なども含む)」を補償するものがあります。後者は補償金額の算定に手間がかかるため、前者を利用するケースが一般的です。

まとめ

今回は「契約保証金」と「入札保証金」について、目的や制度の内容、免除の条件について説明しました。ただし、今回説明した内容は、あくまでも原則や一般論です。発注者や入札案件によっては取り扱いが違うこともあるため、入札に参加する際は入札公告の内容をよく確認し、不明な点は発注者に問い合わせるようにしてください。

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