農林水産省は本年度、農業水利施設の機能保全の手引きを改定する。2015年度以来の全面改定となり、農業水利システムの観点から「機能保全」を実践するほか、水利用機能の診断をストックマネジメントのサイクルに位置付ける。また農業水利システムの停止を招かないリスク管理、標準的な劣化曲線の適切な活用、状態監視保全の適用を広げる新技術の導入なども行う。
農水省によると、これまでに整備された農業水利施設はダムや頭首工、用排水機場などの基幹的施設が約7600カ所、基幹的水路は約5万㎞に及ぶ。各施設は戦後から高度経済成長期にかけて集中的に整備されてきたことから老朽化が進み、補修・補強・更新による機能保全を実施しているものの、今後は適切に機能保全を図っていくことがより重要になっている。
同手引きは、農業水利施設の適切な機能保全により、長寿命化とライフサイクルコストの低減を図るための実務に必要となる基本的な考え方と実施方法の枠組みを示したもの。新たな内容では、機能保全に当たって、状態監視に基づく予防保全の考え方を適用する。機能保全計画は個別施設ごとに策定し、施設造成者が機能診断の結果に基づき、施設管理者の意向を踏まえて①施設現況調査②機能診断調査の結果とその評価③機能保全対策(対策時期、対策工法、機能保全コストの比較、機能保全計画年次表、施設監視計画など)―をそれぞれ取りまとめる。
施設の供用開始後、最初の機能診断はおおむね10年後に実施し、結果に基づき初版の機能保全計画を策定する。その後も施設の日常監視や劣化状況等を踏まえながら適期に機能診断を行い、機能保全計画を見直すことが重要としている。
他にも対策工法の検討に当たって配慮すべき事項として、▽省エネルギー化と再生可能エネルギー導入の検討▽耐震化対策▽流域治水の推進▽環境との調和や歴史的価値への配慮―などを求めている。