業界記事

【私たちの主張④】 土地・建設産業局長賞「建設現場のその先に」

2018-10-12

◎安彦陽子氏(沼田建設、山形県) 「あんりちゃんお迎えでーす。」保育士さんの掛声を聞いて、二才六ヶ月になる娘が私のもとへ駆け寄ってきます。娘と一緒にお友達も近寄ってきて、作業着の十字マークを指差して「これなーに?」と聞いてきます。私は「怪我なく、安全にお仕事しますっていう意味の緑十字だよ。」と答え、さようならを言って家路につきます。作業着のママさんは子供達の目には珍しく映ったようです。  私は施工管理の仕事に携わるようになってから約十年になり、その間土木施工管理技士の資格を取得し、結婚・出産・子育てと経験してきました。現在建設業界にも女性の活躍を推進する取り組みが様々な形で行われていますが、携わる女性の割合はまだまだ少なく全職種で約10%前後、その中でも技術職・技能職は約5%程度になっています。私が働いている沼田建設にも四人の技術職員が活躍していますが、社員数割合で言えば約3%にすぎません。建設業界では女性の活躍は多くの障害があり難しいというイメージや、出産・子育てとの両立の難しさが女性の入職数増加の妨げになっているのでしょう。実際私も入社直前までは様々な悪いイメージを持って居ましたが、働き出してみれば男女の大きな差などは皆無な様に感じました。数年前から現場代理人・監理技術者として現場を任されるようになってからは特に、施工管理者に求められるのは性別などとは関係なく、知識・経験・想像力・コミュニケーション力と多岐に亘るものだと感じています。  娘を妊娠したのは、主任技術者として浄水場貯水タンクの外装塗装工事を担当していた時でした。タンクは直径約16 m高さ約13 mで全面に足場を組立て作業を行うもので、お腹が大きくなってきてからは足場に昇るのも軽々と行きませんでした。作業工程や問題点などを上司や同僚に十分説明し、業務をフォローしてもらいました。作業員さんとも毎日の打合せで様々な事を話し合いながら作業を進める事により妊娠中でも無事に竣工を向かえる事が出来ました。作業員さんからはいつも「無理するなよ」と声を掛けてもらい、とても励まされた記憶があります。  産前産後休業・育児休業を終え仕事に復帰後も子供が急に熱を出したり、風邪をひいたりと現場を離れなければならない事も多々ありましたが、その都度上司や同僚・作業員さん方に助けられ現在も土木施工管理の仕事を続ける事が出来ています。作業員さんとも顔なじみになり終業時間が近づくと、「早く子供迎えに行けよ~。」と声を掛けられる事もしばしばあるようになりました。  現在私は、一般国道直近の落石防止対策工事を担当しています。工事区間内では毎日スクールバスや路線バス・福祉関係車両が往来して行きます。その車両を毎日見送り、「落石対策工事が無事竣工すればこの道を往来する人々の日常生活やスクールバスに乗る子供達の未来生活を守る事が出来るのだろう」と考えながら業務に励んでいます。また、様々な建設現場の先には人々の日常生活や未来があり、私達建設業者は少しばかり陰ながらそれを守っているのだと誇りを持って仕事をしています。  どのような職業でも、女性の活躍は様々な事情によって左右されるものだろうと思います。しかし、建設業界が女性の活躍を推進している今こそ多くの女性技術者・技能者には大きなチャンスがあると私は考えます。  子供達にとって女性やママさんが作業着・ヘルメット姿で仕事をしている姿が珍しくなくなる日も近いかもしれません。

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