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〈建設論説〉 積極的な予防保全を図れ

2018-08-31

 イタリア・ジェノバで8月14日に高速道路の高架橋が崩落する大事故が起こった。原因は特定されていないが、老朽化に伴う適切な維持管理が行われていなかった可能性が高い。日本では2014年度から橋梁やトンネルなどは道路管理者に5年ごとの近接目視による点検が義務付けられ、17年度までの4年間で橋梁は80%、トンネルは71%の点検が完了した。だがその先の措置が進んでいない。
 14年度から16年度に点検を実施した橋梁のうち、次回点検までに措置を講ずべきと判定された橋梁で修繕に着手した割合は国土交通省管理の62%に対し、地方自治体管理はわずか10%だった。また損傷が深刻化してから修繕を行う事後保全型に比べて、損傷が軽微なうちに修繕する予防保全型に着手した割合は低い。事後保全型の修繕はもとより、今後は道路ストックの長寿命化に有効な予防保全型の修繕にも積極的に取り組む必要がある。
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 ある国交省OBは「日本のインフラの老朽化問題は自治体問題と言っても過言ではない」と指摘する。例えば全国に約73万橋ある橋梁の9割以上は自治体が管理するが、16年9月末時点で橋梁管理に携わる土木技術者がいない自治体が373市町村に上ることが国交省の調査で判明している。建設年度が不明の道路橋が全国に約23万橋あり、大半は市町村管理の橋長15m未満の橋梁であることも大きな問題だ。
 着実な予防保全に取り組むためには将来の維持管理・更新費の見通しが欠かせないが、多くの自治体では今後必要となる維持管理・更新費が把握できていない。その前提となる橋梁の個別施設計画の策定率は昨年度末の時点で市町村では約72%にとどまる。
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 国交省は本年度末で道路施設の定期点検が一巡するため、来年度からは「メンテナンスのセカンドステージ」として本格的な予防保全による道路の老朽化対策に乗り出す。また定期点検の見直しとともに、将来的な維持管理・更新費の新たな推計を早急に実施する考えだ。さらに市町村の多くで技術者が不足する現状を踏まえ、自治体への技術的・財政的な支援を充実させる意向も示している。
 点検はあくまでも点検であり、結果を考慮していかに適切な補修や修繕を行うかが最も重要になる。点検データ等を生かした戦略的・効率的な修繕を進めるセカンドステージでは、自治体が前向きに予防保全に取り組めるような支援策が求められる。民間等が開発する新技術・新工法、新たな資材などの導入も有効な対策になり得るが、何よりも予算の手当てが不可欠となる。インフラメンテナンスに国民そして世界の関心が集まる今だからこそ、予防保全を含めた修繕の重要性を本気で考え、積極的な投資を行うべきだ。

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