業界記事

《連載④》 【地域建設業は想定外の災害にどう備えるか】「想像力を働かせた準備も必要」

2017-08-10

 第1部「災害時にどう備えるべきか」では、「北海道・台風豪雨災害」と「糸魚川の大規模火災」での地元建設業の対応を、斉藤井出建設(北海道)の斉藤和之社長と、後藤組(新潟県)の後藤幸洋社長が事例発表した。これに対して、アドバイザーの佐藤直良元国土交通事務次官と皆川芳嗣元農林水産事務次官がコメントした。両氏とも災害経験を生かした平常時からの準備と、災害対応を担う地域建設業の役割の重要性を改めて訴えた。  皆川氏は、兵庫県庁への出向経験や、出身地である福島県いわき市での体験、熊本県をたびたび訪れていた経験から、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震のいずれもが「想定外」だった自身の認識を反省。地震・水害・豪雪・火災などの災害が、あらゆる地域で起こる可能性を述べた上で、「災害経験を記憶に残し、常に備えをしておくことができるかが問われている」と指摘した。  そして「災害に備え、発災時に対応できる存在は誰か、地域を支える人々がどうやって存在し続けるのか、議論を深めていかなければならない」と訴えた。  斉藤氏と後藤氏に対しては「地域への愛情にあふれている」と讃えた。台風豪雨による河川の氾濫で収穫間近の農作物だけでなく、畑の耕作土まで流出した惨状を説明した斉藤氏には「農地の土壌が失われることがいかに大変か。歴史が失われるということまで理解したことに感銘を受けた」とコメントした。  後藤氏には、糸魚川市の復興まちづくりにおける木材の積極的な活用に期待感を示し、「難燃の素材などさまざまな技術が開発されている。技術の粋を尽くして、かつての街並みを生かした糸魚川らしいまちづくりを進めてほしい」とエールを送った。 佐藤直良氏  佐藤氏は、災害発生時に苦しみ悩みながら、歯を食いしばり使命を果たす地域建設業に改めて敬意を示した。一方で「こうした話を聞くたびに残念でしょうがない。いつまで繰り返すのか」と、災害の教訓が生かされず、事後的な対応になってしまう社会資本整備の在り方に苦言を呈した。そして「声を強くしていく必要がある」と情報発信強化の必要を指摘した。  地域のホームドクターとしての地域建設業の役割についても「全うするためにどうしたらよいか。共通認識、枠組みを変える時期にきている」という認識を示した。そして、市民を巻き込んだ北海道留萌市の防災運動会を例に、建設業自身が地域で信頼される存在だと実感できる取り組みの広がりに期待を寄せた。  さらに、想定外の災害をなくすためには、産官学がこれまで考えつかなかったことも想像して準備することが必要だと訴え、「30年後、50年後に斉藤さん、後藤さん、会場の一人ひとりが立ち上がってくれたからと、感謝される存在になれるよう共に頑張っていこう」と締めくくった。(地方建設専門紙の会) (つづく)

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