業界記事

《連載③》 【地域建設業は想定外の災害にどう備えるか】「糸魚川市の火災で消火活動支援を即座に判断」

2017-08-09

 2016年12月22日朝、新潟県糸魚川市で大規模火災が発生した、糸魚川市建設業協会会長として消火活動の支援に当たった後藤組(新潟県)の後藤幸洋社長は、自らを含め「とっさの判断」で動いた現場の状況や、過去の大火の経験を生かせなかった反省などを報告した。  1軒のラーメン店から出た火は、古くからの木造住宅が立ち並ぶ街に延焼・飛び火し、火元から300m離れた日本海沿岸まで広がった。「最大瞬間風速27mを超える南風が終日吹き、飛び火で周囲も出火した」と振り返る後藤氏。人の頭ほどある〝火の塊〟が、周囲の古い民家に降りかかった。  死者こそ出なかったが、147棟の焼損と被害は甚大だった。上越市や富山県の消防にも応援を要請し、警察や自衛隊も動いた。消防用水が不足する中、被災地に住む生コン協同組合の会社社長も自社のミキサー車を出動。生コン組合3工場などから延べ400台のミキサー車が水を運んだ。「初動はこうした『人』によるとっさの判断だった」と後藤氏は話す。  総勢約1000人が出動し、夜9時近くに鎮圧。すぐに消防本部から、市建設業協会会長の後藤氏に消火活動支援の要請があった。市と締結していた災害時の応援協定には火災に関する項目がなかった。しかし「すぐに手配する」と判断し、残火などの処理に当たった。  重機は延べ6台を投入。残火処理は発災日の夜から行われ、まだ形のある家屋を解体するなどして延焼の危険を取り除いた。翌23日の夕方にようやく鎮火。火災発生から約30時間が経っていた。24日からは市道のがれきを撤去。交通規制誘導ではガードマンが不足し、建設業も誘導に当たった。被災地を改めて見ると「爆弾が落とされたようだった」という。  今回の火災を経験し「過去の火災を市民がどれだけ真剣に受け止めていたかが反省点」と後藤氏は指摘する。糸魚川市では昭和3年と7年、29年にも、地域特有の強風が被害を拡大した大火を経験している。歴史上の事実として認識していながら、それが「風化していた」ことは否定できない。  国は火災では初めて「被災者生活再建支援法(風害による)」を適用、今後、復興に向けたまちづくり計画が策定される。計画には①大火に負けない消防力の強化②大火を防ぐまちづくり③糸魚川らしいまちなみ再生④にぎわいのあるまちづくり⑤暮らしを支えるまちづくり⑥大火の記憶を次世代につなぐ―という6つのプロジェクトを掲げている。  まちづくり方針の三つの柱である「災害に強い、にぎわいのある、住み続けられるまち―をつくりたい」と後藤氏は強調。建設業の仕事の内容を伝えるため毎年開いている「まちづくりと土木・建設フェア」などを通じ、「今回の火災を市民にしっかりと伝えたい」と決意を新たにした。(地方建設専門紙の会) (つづく)

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