業界記事

《連載②》 【地域建設業は想定外の災害にどう備えるか】/「高速道路を58時間で復旧」

2017-08-08

 2016年夏に北海道を襲った台風豪雨災害への対応について講演した斉藤井出建設(北海道)の斉藤和之社長は、被災状況や復旧に奮闘する建設業者の姿を伝えながら、「人々が安全で安心して暮らせるようにするのが建設業者の役割であり使命」と強調した。  16年8月、北海道は17日から31日にかけて四つの台風に襲われ、道東エリアを中心に甚大な被害を受けた。17日、台風7号が最初に上陸した。北海道への台風上陸は9年ぶりだった。翌18日未明には河川が氾濫し、同社の本社のある足寄町でも床上浸水の被害が続出。斉藤氏によると「早朝から土のうの設置に追われ、設置した土のうの総数は3日間で1513個に上った」  その後、すぐに台風11号と9号が上陸。1週間の間に三つの台風が上陸するという状況の中、通行止めや床下浸水の被害が広がった。そして30日に接近した台風10号により多くの河川が氾濫し、床上浸水や農地の冠水、道路の崩壊など、南富良野町や十勝地方に壊滅的な被害をもたらした。  通行止めは国道で最大17路線27区間、道道で84路線101区間となり、高速道路も被害を受けた。その結果、北海道の東西が分断された。各自治体は北海道開発局や地方整備局からテックフォースの派遣を受けた。一方、「地元建設業者は昼夜を問わず応急復旧に奔走し、高速道路は58時間で開通させた」(斉藤氏)。  これらの災害による農業被害額は北海道全体で542億円に上り、取扱高も小麦が前年比60%減、豆類が40%減となるなど農家にとって大きな痛手となった。  農家にとって作物の被害以上に影響が大きいのは畑の耕作土の流出だ。耕作土は農家が長年培ってきた最大の財産であり、土を入れ替えてもすぐには回復できない。斉藤氏は農協の組合長が言った「洪水によって、土ではなく歴史が流された。10年たっても土に元の地力は戻らない」という一言に胸を突き刺された。  流出した耕作土は膨大な量だった。農家だけでは復旧できないことから、河川の災害復旧でたまった土砂を畑に搬入した。すぐに元の畑に戻るわけではないが、斉藤氏は「流木や汚泥を処理したり、整地したりすることは復旧のための第一歩であり、地元建設業者の大きな役割の一つ」と力を込めた。  北海道の道東エリアは食の一大生産地だ。出荷は高速道路に頼っている。斉藤氏は「今回の災害では、高速道路のおかげで陸の孤島は生まれなかった」と交通網の重要性を強調。そして最後に「地域に住んでいる人たちが安全で安心して暮らせるようにするのが建設業者の役割であり使命」と締めくくった。(地方建設専門紙の会) (つづく)

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