業界記事

【公共建築工事の課題】 求められる予算決定時期の工夫

2017-04-20

 地方自治体が行う庁舎建て替えなどの建築事業が円滑に進むように、課題の検証と対応策の検討が国土交通省の有識者懇談会で始まった。発注者、設計者、施工者などの関係者から現状の課題や要望を聞いた上で、6月にも実践的な手引きを作成する見通しだ。多くの自治体では企画段階における基本計画をもとに予算を決定しているが、基本設計以降、仕様の見直しや不調不落への対応など、予算管理に苦慮している場合が目立つ。そのため事業予算の決定時期を工夫し、各段階で変動する予算をいかに管理できるかが重要となる。
 土木工事とは異なり建築工事は民間の市場が大きく、民間市場の動向を正確に把握した上で公共建築の事業に反映させることが難しくなっている。近年は、特に数十年に一度の大規模建築工事を自治体が発注する場合、予定価格と応札額との開きが大きく、結果として不調不落になる例が相次いだことは記憶に新しい。
 なぜ、このような状況が生じるのか。まず問題なのは基本計画の時点で事業部局が予算を決定する点にある。予算決定の根拠に古い事例や構造が異なる事例の平均坪単価が採用されることで、精度が低くなると考えられる。
 設計段階の課題も多い。発注者の要求をそのまま全て反映させると、当然ながら設計内容に予算との不均衡が生じる。実施設計の段階までに実勢価格が高騰したり、住民からの要望をできるだけ反映させた結果、当初想定以上の水準が必要になる場合もある。予算決定後、入札までの期間でも労務費や資材の価格変動が生じることで、入札時には見積価格と実勢価格に開きが出てしまう。
 また、工事発注までの間に設計の精度向上や物価変動があったとしても、企画段階で措置した予算の範囲内で対応しなければならないことが多い。本来であれば基本設計段階の精度を高めることが重要であるが、その重要性を理解していない発注者も存在する。さらに、刊行物に掲載されていない単価については設計者がメーカー等から見積もりを徴収するが、地方ではメーカーが少ないほか、最近では見積もりに応じない、または有料とするメーカーが増えているなど積算段階における課題も多い。
 多様な入札契約方式の活用に取り組む自治体が増える中、発注方式によって費用が変わってくるため、状況を踏まえた柔軟な対応が必要となる。発注者側の体制が弱い場合には、適切な外部支援の活用も検討する必要があるだろう。今後の懇談会での検討を通じて各自治体が共通で抱える課題を解決し、より円滑な事業推進につながるような手引きの作成が期待される。

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