業界記事

〈建設論説〉 「金の切れ目が縁の切れ目」になる前に

2017-03-31

 地域の建設業はなぜ必要なのか。最近は地域建設業に期待される役割として「地域インフラの担い手」「災害時の応急対応」「地域の基幹産業で雇用の受け皿」といった言葉を耳にする機会が増えた。いずれも間違いではなく、実際にその役割を期待している地元の自治体や住民は多いはずだ。  ただ災害時の応急対応を担う建設業が献身的に公務に協力している割に、社会的地位は高くない。緊急時に建設業が活躍するのは災害時だけではなく、最近は家畜伝染病発生時にも迅速な対応を図るために国や都道府県と建設業協会が防疫協定を結ぶ事例が増えており、従来にも増して活躍の場が広がっている。協定を締結しているから当然のことと簡単に片付けてはいけない。いざという時に迅速に駆け付けて現場の最前線で活躍する建設業、特に地域の守り手として安全・安心の確保に貢献している地域の建設業の地位向上を本格的に検討する段階に来ている。   ◇◆◇◆◇◆◇  大規模災害時や大雪の際に建設業者は自らの危険を顧みず不眠不休で応急復旧や除雪活動に従事する。根底には「地域の安全・安心を支える」という意識がある。地域に精通した業者が存在することで地震や水害発生時には素早い初動対応が行え、早期の復旧につながる。また、日ごろから異常を発見することで重大な事態を未然に回避することもできる。  足立敏之参議院議員は今月、国会で「警察や消防、自衛隊は災害対応の準備について日ごろから本来の仕事として活動しているのに対し、建設産業は日ごろの建設工事を行う中で利益を上げて体制を整え、いざという時に蓄積した能力を発揮して対応しなければならないという宿命にある」と指摘。一定の工事量を計画的に確保し、仕事をすれば利潤が生まれる環境を作り上げることが「国の重要な責務」と訴えた。付け加えるならば都道府県・市区町村にとっても「重要な責務」だ。言うまでもなく適正な利潤を確保するための予定価格の適正な設定は公共工事品確法運用指針で必ず実施すべき事項とされており、基本中の基本である。   ◇◆◇◆◇◆◇  東日本大震災以降、地域に根ざす建設業者の重要性は広く認識されたが、これからも地域密着型の建設業者が存在していけるのかどうかについては不安がある。建設投資額が減少した時期に人員や機材を減らした業者は多く、今後、人材や機材を増やすことはおろか、事業量が激減している地域では現状を維持することすらままならない。  とはいえ事業量が確保できれば解決するという単純な話でもない。国土交通省が2月に行ったアンケート調査によると、市町村は総じて建設企業が保有する重機やオペレーターの活用、被災箇所の迅速な調査・状況把握など自らの業務の補完のために災害協定を締結する傾向にある。その一方で中小規模の自治体では災害協定の締結を入札時やランク分けの際に加点評価していないと大半が回答している。これでは「平時に評価はしないが、いざという時には協力してください」と言っているのと同じことであり、虫が良すぎる話だ。いくら協定を締結しているといっても、双方が信頼関係を築くには程遠いのではないか。  ある業界団体の幹部は「本来は対等な立場で協議しなければならないが、市町村から、これでやってくれと言われると断れない中小の建設業者は多い」と話す。無理な工期や予定価格の設定、設計変更に応じてもらえないなど、依然として片務性の問題が解消されていない現状がある。  事業量が減り、業者が撤退すれば、それこそ「金の切れ目が縁の切れ目」になりかねない。そうなる前に、地域建設業者の存在意義を再認識し、受発注者の枠組みを超えて、地域の守り手の重要性と地位向上を真剣に考えなければならない。その結果、建設業に勤めていることが地元で高く評価され、若者が憧れを抱く業界になれば、誇りを持って働く担い手の育成にもつながるはずだ。

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