業界記事

「山は血を流す」/事務所長インタビュー

2006-04-25

 「自然や四季の移り変わりが好きなこと」が砂防へのきっかけ。自身をナチュナリストと呼ぶ。「山の土砂を押さえる砂防は、山への植樹や木々の禁伐・管理に基本概念がある」と含蓄を披露。職務も「本省は予算、現場はもの造り」という相違はあるが、ともにやり甲斐の仕事と断言。顔に充実感がにじみ出る。ただ昔と違って、業務量では比較できないが「先輩からの技術継承が少なくなった」と後悔の念。
 砂防地域は「中山間地が大半だが、神戸のように都市部も存在する」と語る。都市部は騒音や用地交渉の困難さ、反対運動が伴うが、中山間地は就労や土地提供の場など地域振興的一面があり、地域のプラス面が大きく、まさに砂防事業そのものといえる。このように都市部と中山間地はかなり差異がある。お互いに砂防の大切さをよりよく理解させたい。
 公共事業から見た砂防の特徴は「道路などは整備効果が理解できるが、砂防の整備メリットは一般には理解し難いようだ。災害ばかりが目立つ」。つまり、道路などの公共事業はゼロからプラス効果を生む。しかし、砂防は被災がないことが効果となる。つまりマイナスからゼロにすることが他の公共事業と大きく違うところである」と強調。人の目につかない事業なので、砂防、防災に関心を高めるべく各種イベントも行っている。
 砂防事業の重点施策は(1)総合土砂管理対策(2)ソフト面も含めた総合的な災害対策(3)リサイクル推進(4)自然との共生と述べ、事業を解説する。
 総合土砂管理対策とは「大雨時に土砂を止め、少雨の時に土砂を流し、河川や海岸にもよい工法」だと推進しているのが、総合土砂管理対策一環のオープンタイプ砂防堰堤。いまは主流工法という。上流河川からの土砂が減少すると、海岸、橋脚、河床がえぐられ、災害を誘因しかねないため、防止に全力傾注。
 ソフト面は雨量情報表示板整備といった警戒避難に役立つ施設を管内全域に設置するのが役割。リサイクル推進は、現地で発生した土砂にセメントを混ぜてコンクリートの代わりにする「砂防CSG工法」などを推進しコスト縮減を図っている。自然との共生は魚道整備が主体。これらは目玉事業であり課題事業でもあると話す。
 山梨の地形的特徴は「急峻な地形は砂防の怖さそのもの。早川流域の七面山の大崩を視察したが、土砂の流れはダイナミックである。まさに山は血を流している状態だ。そのためにも砂防の大切さ重要性を理解してほしい。砂防の仕事は「人知れず」。人に知られるようにPRしたいと強調。
 入札制度改革は「一般競争4件程度、総合評価も8件程度施行」と示唆したうえで、施工管理を含め最低限の技術的考え方を問う簡易的評価を実施したいと述べた。
 施工者に望むことは「施工体制もさることながら安全管理をしっかりやっていただきたい」と要請。現場は気象や地形に左右されるので、施工者の皆様から「安全面からの論文」を毎年提出していただき、安全管理指導の徹底を図っていると力説した。
 山下勝(やました・まさる)所長は技術士。専門は砂防。昭和31年11月18日生まれ。申年。神戸市出身。林学専攻。11月18日は、奇しくも旧建設省が制定した「土木の日」。作曲家古賀政男の生誕の日でもある。近畿地建六甲砂防工事事務所を振り出しに、昨年4月関東地方整備局富士川砂防工事所長に就任以来、全国13行政庁を砂防畑中心に行脚。家族は妻と1男1女。長男は今年東京で大学生活に。
 趣味は山歩き。白山なども経験。また家事が得意。酒の肴作りは日課の楽しみ。山梨赴任後は、白州の水を使った地元の銘酒「七賢」(山梨銘醸)を嗜む。山梨銘醸は富士川砂防工事事務所の白州出張所(北杜市白州町)の隣組とあって近所付合いの間柄だという。
 座右の銘は「和を以って貴しと為す」(聖徳太子、十七条憲法の冒頭の一句)。「仕事は仲良く楽しくやる」ことをモットーとしている。
 山下所長は、厳しい自然条件と戦いながら地域の安全を守ってきた砂防技術者の、熱意と誇りを秘めた「碑文」をある雑誌に、「碑文の教え」と題して寄稿。「砂防に携わった人々を労わっている」のが感動的だった。

 職歴=近畿地建六甲砂防工事事務所を振り出しに、福岡県砂防課、建設省砂防部、昭和61年4月東北地建新庄工事事務所調査課長、翌年4月東北地建河川部河川計画課補佐(仙台)、平成元年4月北陸地建河川部建設専門官、同2年4月沖縄総合事務局開発建設部河川課長、同4年4月国土庁防災局防災業務課長補佐、同6年4月建設省河川局砂防課長補佐。
 その後、平成7年4月四国地建吉野川砂防工事所長、同9年4月近畿地建六甲砂防工事所長を経て、14年4月神奈川県県土整備部砂防海岸課長、17年4月関東地方整備局富士川砂防工事所長に着任。

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