業界記事

石垣復元を効率化 雄測量設計がシステム開発

2018-12-08

 建設コンサルタントの雄測量設計(中村明雄社長、甲斐市)は震災などで崩れた石垣の復元を支援するシステムを開発した。石垣の写真と石個々のデータを照らし合わせ積まれていた位置を特定。大幅な作業時間の短縮が期待できる。東日本大震災で被害にあった小峰城(福島県白河市)の復元や甲府城跡の管理に活用されており、今後熊本城の復旧事業にも売り込む。
 重要文化財に指定された石垣が地震などで崩れた場合、石の積み位置を含め原則元通りに復元することが求められる。県学術文化財課によると、甲府城跡ではこれまで石垣が大きく崩れたことはないが「仮に崩れた場合、城に詳しい学識経験者を交え、石垣の写真を見ながら位置を特定することになる」という。
 同社によると、小峰城の場合、崩落した石の数は1万個を超える。従来は崩落前の写真を見ながら大きさや形などをヒントに1個ずつ位置を特定していた。1日で特定できるのは1人あたり5個程度。特徴的な形をした石は付け合わせがしやすいが、作業が進むと似通った形や大きさの石ばかりが残り特定作業は困難になる。連日の細かな作業に作業員の疲労も重なり、付け合わせのスピードや精度は次第に落ちていったという。
 開発したシステムでは、従来の数十倍のスピードで位置の特定が可能となる。石垣の写真と石個々の大きさや形などのデータを取り込むだけで大半の石の位置を特定。同社の有井圭司専務は「500個のマッチングにこれまでは10日ほどかかったが、このシステムでは1日かからない。最終的には3秒に1個のスピードを目指す」と意気込む。小峰城については管轄する白川市役所に石垣に特化した写真がなかったため、市が観光客らに呼び掛け石垣が大きく映っているスナップ写真を入手した。
 スピードとともに優れているのがマッチング率72%という精度の高さだ。輪郭だけで判別するジグソーパズルのピースと違い、石の判別には立体的な要素が伴う。このため人の表情を認識するソフトを応用し石の断面の凹凸などを数値化。石垣の写真に並ぶ“石の顔"と崩落した石の顔を付け合わせることで精度を高めた。ここまで絞り込めば後は目視などでほぼ100%マッチングすることが可能だという。
 さらにシステムでは石の保管場所の管理もできる。小峰城の場合、崩落した石には個々に“背番号"を付け、広大な場所に横並びにして保管している。積み直す段階では、この中から次に積む石を1個ずつピックアップしていくことになるが、目的の石を探し出すまでにかなり時間がかかる。そこで積み位置だけでなく、現在の保管場所を示す情報を付加してシステムで管理。膨大な数の石の中から短時間で目的の石を探せるようにした。
 当初は設計支援ツール、CADを活用しシステム開発を進めていたがうまくいかなかった。このためソフト開発会社のヒューマンズ・ネット(神奈川県小田原市)に協力を依頼。その後富士通も加わり各社の持つノウハウを結集しシステムの完成にこぎつけた。今後は石垣断面のデータを基に石の積み方などの工程を示した、復旧工事の設計を作成するシステムも開発予定だ。
 中村社長は「小峰城と甲府城だけでの試用結果とはいえマッチング率72%は画期的。今後はそのほかの復旧事業にも利用してもらい実用化に持ち込みたい」と話している。

【写真=石の大きさや凹凸を基に位置を特定】

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