業界記事
新分野進出ライブラリ51
2004-10-28
■新分野・新市場への取組又は先進的な取組等(以下「当該取組」という。)のテーマ
◇各種新技術の独自開発と事業化。
<1>セメントスラリー注入方式によるコンクリートひび割れ補修工法(アングルC工法)の開発と販売
<2>高気密高断熱の木造建築物合理化工法(COME工法)の開発と販売
<3>ITソリューション事業への挑戦
■取組の内容
◇アングルC工法
微細なひび割れ(0・1mm幅)へのセメントスラリー注入を可能とする工法を開発し、関連会社を通じて販売。注入施工は主に関連会社が行っているが、材料・器具ともに市販されているので、購入者が自ら施工することも可能。
◇COME工法
高品質な木造建築物(住宅及びオフィス)を合理的に構築する工法を開発し、「カムホーム」「カムオフィス」のブランドで販売。自社工場で加工した高品質な標準化部材を用いて施工の簡略化を図り、独自技術で高気密高断熱化を可能とした。自社施工と外注施工を併用。
■アイデア発案の契機
◇アングルC工法
塩害コンクリート補修をきっかけに、1988年、地元の生コン業者、大手セメントメーカーと劣化コンクリート補修を行う「日本メンテ開発(株)」を設立。当時はコンクリートのひび割れ補修は樹脂注入が主流だったが、自社開発に取り組んだ。
◇COME工法
1990年、新しい工法を売り物としていた某ハウスメーカーの新軸組工法によるフランチャイズに入った。より簡単な工法を目指して材料・工法両面でアイデアを出し合い、独自工法を開発。
■社長の役割と社内の実行体制
◇「アングルC工法」は、社長の土木技術者としての経験と、セメント系構造物の補修にはセメント系の材料を使うべきとの強い信念により、従来の常識を打ち破った。「COME工法」の開発では従来工法の問題点を社長を中心に徹底的に議論し、耐力実験や施工実験で解決策を見出した。
■従業員教育、新規の人材確保等の方法
◇外部の講習会には社員を積極的に参加させている。開発及び導入した特定の技術は、社内研修を継続して実施。社員が自主的に技術開発に取り組むことを重視し、成果は人事評価に反映させ、社内研修で発表する。全社員の年度技術成果は選抜して毎年社内論文集にまとめている。
10数年前から研究開発全般を担当できる機械系やソフト系技術者を2、3名採用(地元Uターン者)。「COME工法」は販売体制のために営業職を数名採用した。
■事業化までに至る間で苦心したこと、及び成功の要因
◇アングルC工法
セメント系注入材が従来方法ではひび割れに入らない原因を解明するのに苦労した。原因がわかった後もそれを取り除く方法が見つからなかった。工法が完成しても、当時は微細ひび割れの補修にはセメント系材料は使えない仕様が多く、認めてもらうのが大変だった。
一方、日本メンテ開発(株)設立時に大手セメントメーカーの出資が得られたことは、信用力で大きな効果があった。
最大の成功要因は、研究開発全般を見させるために雇用した機械系大学出身者が技術開発に大きく貢献したこと。
◇COME工法
戸建住宅の販売は未知の分野のため、外部からのアドバイスをもとに、ブランド名決定、各種販促活動などに相当なエネルギーを費やした。
■主たる顧客等
◇アングルC工法
当初は地元の同業者が多かったが、今では口コミやホームページの効果で、大手を含む全国のゼネコンで使われている。
◇COME工法
主に山形県内の一般消費者を対象としている。
■差別化等のポイント
◇アングルC工法
セメント系注入材を微細ひび割れに注入できることが、他の工法にはない差別化である。
◇COME工法
構造を簡素化したことで施工性が良くなり、設計の自由度が高まった。高品質な部材を用い、柱梁の接合も工夫し、3階建ても可能。高気密高断熱化しているので、省エネ効果が高い。
■投資額及び必要資金の調達法
◇売上高の1%以内を目安に研究開発投資(人件費含む)しており、基本的にはその範囲内で技術開発を行っている。。
■事業のスタートからの売上及び利益
◇アングルC工法
コンクリート補修工事の中での単体による内部利益効果は把握しがたい。単体外部販売も行っているが工法の認知度が低く、大きな利益を得ているほどでもない。
◇COME工法
「カムホーム」として市場に出したのは1994年。最盛期の売上は年間数億円(約30棟)あったが、最近は景気の低迷もあって受注量は半減以下。販売量が戻れば利益は出る。
■大きな成果と思われるもの
◇技術力の向上はもちろん、開発過程を通じて全社員が従来の会社のやり方を常に変化させるという意識を持ち続けたこと。開発した技術が外部コンクールなどで評価されたり、特許の取得で、自分たちの技術に対する自信となり、さらなる意欲につながるという好循環をもたらしている。
■公的助成・支援制度の活用状況
◇業界全体の技術向上のために、自主技術の開発に力を入れている会社にメリットが出るような社会的な支援構造を構築してほしい。
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