業界記事

災害ゼロに満足せず/建設業労働災害防止協会伊藤正人専務理事に聞く(その1)

2004-10-18

 建設業労働災害防止協会(銭高一善会長)が創立40周年を迎えた。今月14、15両日には記念大会が東京国際フォーラムなど6会場で開催された。創立当時と比べると、建設労働災害の犠牲者は4分の1に大幅に減少した。同協会をはじめ、関係機関や各企業の努力によるところ非常に大きいものがあるが、全産業に占めるその割合は33%強と未だに高い比率を維持している。そこで、同協会の伊藤正人専務理事にインタビューし、創立40年に至る現在までの協会活動と労働災害防止活動を一層推進するための各種事業について考えをお聞きした。伊藤専務は、最近の労働安全衛生上の問題点として、第1にベテラン担当者の不足による職場の安全衛生水準の低下、第2に災害ゼロに満足してしまい危険を見落としたままになっているおそれ、第3に災害が減少してきたことによる危険の感受性の低下、の3点をあげた。
 --建設業労働災害防止協会が、昭和39年に設立されて、40周年を迎えたわけですが、この間の建災防の活動について伺います。
 伊藤専務理事 はじめに建災防設立の経緯に触れておきたいと思います。我が国の労働災害による死傷者数の推移をみると、全産業、建設業とも昭和36年がピークとなっています。全産業の死亡者数は6712人に上り、そのうち建設業は2652人でほぼ4割を占めていました。政府は、労働災害の増加に対処するため昭和33年に「労働災害防止計画」を公表し、それ以降5年ごとに新たな5カ年計画が策定されて現在の第10次計画に至っていることはご案内のとおりです。建災防が設立された昭和39年は、第2次計画の2年度目にあたるわけですが、第2次計画で特に重点とされたのが、事業場の自主的な安全活動の促進ということでした。労働災害の実を上げるためには、やはり労働者の安全衛生に直接の責任を持つ事業者が自主的に労働災害防止活動を行うことが重要であるということが強調されたというわけです。そして、事業者による自主的活動を促進するためには、事業者に対して技術面を中心としたきめ細かな指導援助を行う組織が必要であるということで、昭和39年6月に「労働災害防止団体法」が制定され、この法律に基づいて同年9月1日に建災防が設立されたわけです。
 したがって、建災防には、この法律に規定された業務を着実に実行する義務があります。そこで、労働災害防止規程の設定、会員に対する技術的事項についての指導援助、技能講習や調査・広報の実施等を行うとともに、これらのことに関係した厚生労働大臣の要請に応えてきたところです。
 具体的には、創立以来、災害発生状況を踏まえた労働災害防止規程の設定、技能講習や安全衛生教育の実施、全国建設業労働災害防止大会や経営首脳者セミナー・安全管理者セミナー等の開催、教材の作成と見直し、教育カリキュラムの策定、建設業安全衛生教育センターの設立・運営等、広範な事業を展開してきたところです。また、厚生労働省からの委託事業についても各支部、関係団体等との連携を図りながら事業の目的達成に向けて努力してきたところです。
 この40年間、建災防がこうした活動を円滑に実施することができたのも、偏に労働安全衛生の重要性を深く認識され、積極的に自主的な安全衛生活動に取り組んでこられた会員各位の御理解、御協力、そして厚生労働省、国土交通省をはじめとする行政機関の御指導、御支援の賜であり、大変ありがたく思っております。
 --近年、建災防の事業活動では、新しい事業を実施してきておりますが、その活動の現状と今後の展望について伺います。
 伊藤専務理事 はじめに、最近の労働安全衛生上の問題点を3点上げさせていただきます。
 第1点目は、企業や労働者を取り巻く社会経済情勢の変化によるもので、ベテランの安全衛生担当者の確保が困難になるなど長年培われてきた安全衛生管理のノウハウの継承が困難になり、職場の安全衛生水準が低下してきていることです。次に第2点目は、たまたま災害発生に至っていないだけであるにもかかわらず、結果としての災害ゼロに満足してしまい、危険を見落としたままになっているおそれがあるということ。そして第3点目が、災害が減少してきた結果、悲惨な状況を目の当たりにすることがめったに起きないことから、危険の感受性が低下してきているということです。
<建設業労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS:コスモス)の普及促進事業>
 このうち第1と第2の問題に対応するのが、労働安全衛生マネジメントシステムであると考えています。すなわち、トップのリーダーシップの下に、組織として継続的かつ計画的に職場の危険ゼロに向けて安全衛生活動に取り組むことが必要な状況にあると思います。
 平成11年4月に当時の労働省から労働安全衛生マネジメントに関する指針が公表されましたが、建災防ではこれに基づいて、建設業の実情に即した内容の建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン、略称「コスモス」を策定し、同年11月に公表いたしました。
 建設企業におけるコスモスに対する関心は非常に高く、建災防においては、コスモスの普及を図るため、全国において説明会を実施したほか、千葉県佐倉市の建設業安全衛生教育センターにおける企業のコスモス構築担当者研修、地域における研修会、企業に対するシステム構築の指導などを実施してきたところです。このうち、建設業安全衛生教育センターにおいては、平成12年12月に「コスモス構築担当者研修講座」を開講し、本年8月末までに35回、895名の修了者を見ております。また、本年1月に「コスモス内部システム監査担当者研修講座」を、さらに中小総合工事業者などのシステム構築担当者を対象とした「コスモス構築担当者研修講座ベーシックコース」を8月から、それぞれ開講しております。
 それから、既にシステムを構築し、運用している企業から、システムが適切に確立され、かつ運用されていることを第三者に評価してもらいたいという声が多く寄せられたため、平成15年1月からコスモス評価サービス事業を開始し、現在に至っております。
 コスモス評価サービスでは、学識経験者等で構成される審査会の審査を経て評価証の交付を行っておりまして、コスモス評価証の取得は、今後安全衛生管理に取り組む日頃の努力に対するプロセス評価につながるものと思います。すなわち、企業の安全管理活動に関する社会的評価は、労働災害発生の有無という結果のみで判断されるのではなく、プロセス評価を含めて総合的になされるようになるものと考えています。
 なお、コスモス評価サービスを実施した本・店社数は、現在までで18本・店社あり、このうち11本・店社については、コスモス評価証を交付しております。
 ところで、平成13年6月にILO(国際労働機関)が「労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)に関するガイドライン」を公表しましたが、ILOにおいては、コスモスガイドラインは、ILOガイドラインに示す枠組みに即して定められた世界初の業種別ガイドラインであるとして高く評価し、ILOのホームページでCOHSMSについて紹介するとともに、ILOのホームページと建災防のホームページとをリンクさせてくれることになっております。
今後コスモスに基づくシステムの構築が進むことによって、建設業全体の安全衛生水準が飛躍的に向上するものと確信しております。

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