業界記事
新分野ライブラリ40
2004-10-13
■新分野・新市場への取組又は先進的な取組等(以下「当該取組」という。)のテーマ
◇内装仕上工事業者が高齢者・障害者を対象とした住宅リフォーム、介護用品販売のため子会社設立。
■取組の内容
◇平成10年に住宅リフォームと介護関連商品を販売する子会社(株)フジックスシステムエンジニアリングを設立した。介護用品専門店として車椅子、入浴補助器具、歩行器などを取り扱っている。
「バリアフリー」と「ケミカルフリー」を心がけ、ビジネスコンセプトは高齢者・障害者の生活をサポートすること。リフォームは、顧客の要望に基づき、安心・安全を第一に考慮し、施工を行っている。
■アイデア発案の契機
◇1990年ごろから高齢者・障害者に対するビジネス構想を持ち、96年ごろに本格化させる戦略を立てはじめた。
97年春にTOTOの合意を得て、店舗設置計画が本格化。同年8月、店舗を開設した。流通整備は後回しになったが、工事の受注が順調だったことで、落ち着いて販売体制が整備できた。福祉用具は販売と貸与サービスを実施している。
■社長の役割と社内の実行体制
◇親会社の社長が子会社の社長を兼務しているが、社長は完全なるプレーイングマネージャーで、企画から現場作業等まですべてを担当している。
■従業員教育、新規の人材確保等の方法
◇社会福祉協議会でのホームヘルパー、かながわ福祉サービス振興会での福祉用具専門相談員、商工会議所での福祉住環境コーディネータなどの資格取得のほか、日本増改築産業協議会での内部研修、地域の介護支援専門員グループの勉強会への参加などによって、レベルアップを図っている。福祉住環境整備工事における現場での作業員教育も絶えず行い、福祉の精神を浸透させている。
人材確保では、子会社設立に伴い新規に社員2名を採用し、13年度からはパート社員を1名増員。
■事業化までに至る間で苦心したこと及び成功の要因
◇福祉用具に関する情報不足と流通の開拓に苦労した。開店当初、既存の取引先では仕入れられない介護用品などの流通ルート開拓は、独自調査をし、こちらから申し込みをしていった。
現場での作業員に福祉の精神を浸透させるには時間がかかっている。
一方、整備計画・設計では、建築の常識や慣習を打破して、あくまで利用者本位で身体特性への室内環境の合致をしなければならない。
■相談・助言、情報収集等の相手先
◇当初は、設計や技術的部分は、横浜市の理学療法士や建築士の先生に指導を受けた。市内各区の福祉保健課(ケースワーカー)にも指導を受けるなど、福祉医療の専門家との接触を多く図った。
TOTOには、福祉建築専門店としての承諾を受け、福祉行政とのコンタクトをとってもらうなど、営業的なサポートをしてもらった。
■主たる顧客等
◇顧客は横浜市内各区の福祉保健センター、在宅介護支援事業者各社、一般の消費者である。売上の割合は、50%が介護保険制度及び市助成制度利用の住宅改造工事(高齢者)、20%が制度外の一般改造工事(高齢者とその家族)、20%が福祉用具のレンタル事業(高齢者)、10%が福祉用具の販売(高齢者および一般消費者)。
■差別化等のポイント
◇クライアントを高齢者・障害者に絞り、建設業のカラーも排除したこと、スタッフを福祉の専門家として育成した。
福祉サービス業者として、建築の知識技術と施工体制を備えていることは他社にはないもので、リフォーム事業者としても福祉に強みを持っている。レンタル事業を行っている企業は少なく、顧客との接点が多いことで細かなニーズと情報収集が可能。
手話通訳者がいることで聴覚障害者の相談が寄せられたり、福祉行政からは、TOTO機器の採用の場合に優先的にオーダーが寄せられる。
■投資額及び必要資金の調達法
◇店舗整備等に500万円。フジックスからの借入れ(立替え)であったが、既に完済しており、現在も融資等は受けていない。子会社は休眠していた法人を再利用した。
■事業のスタートから現在までの売上及び利益の推移
◇平成9年度(初年度)の売上は約1400万円であったが、年々増収し、13年度の売上は約6000万円。
■大きな成果と思われるもの
◇建築福祉の専門店として対外的に信頼を獲得したこと。福祉住環境整備では、現況調査、現場での気配り、半永久に「引渡し」のない中でのモニタリングの反復など、一般のリフォームでは考えられなかった部分の重要性を強く認識したが、そうした部分は親会社によい影響を与えている。
■今後の課題と解決方針
◇収益の確保と、顧客へのよりよいサービスを提供しつつ一定の収益を確保したい。介護関連オリジナル製品の発売により、収益確保策の推進を図りたい。
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