業界記事

揺れ動く独占禁止法/米国は公取委権限強化要望/財界は拙速改正に反発

2004-04-28

 「悪質な独占禁止法の違反の防止は、効果的な競争法の執行制度にとって最も重要である。しかし、独禁法に規定されている課徴金の水準は、効果的な抑止をするには、あまりにも低すぎる。よって、米国は、日本に対して、以下のことを要望する」
 この前文は、昨年10月に発表された「日本政府への米国政府の年次改革要望書」の一節である。毎年、米国から日本政府へ提出される同要望書のテーマは電気通信、情報技術(IT)、エネルギー、医療機器・医薬品、金融サービス、競争政策、商法、流通など多岐にわたる。独占禁止法の問題は、競争政策の一環として言及されている。
 「独禁法違反の防止・行政上の罰金(課徴金)の水準を売り上げの約20%に引き上げ、3年間の課徴金適用上限を排除し、違反を繰り返す相手に厳しい措置を課し、一層の刑事告発を促す」
 「公正取引委員会の執行力の強化・措置減免制度を導入し、公正取引委員会に国税庁や証券取引等監視委員会のような調査権限を与え、公取委の経済分析能力を高め、刑事告発手続を正常化させ、排除措置命令の時効期間を3年に延長する」
 右の文は米国の「年次改革要望書」のうち「競争政策」の提言の概要である。現在、独占禁止法改正案の国会提出をめぐり、公正取引委員会と日本経団連など経済団体との激しい意見の応酬が続いているが、公取委が目指す改正案の原型が同要望書に盛り込まれている。
 独占禁止法は、もともと反トラスト法として米国で立法化されたもので、日本では戦後、GHQ(連合国軍総司令部)によって法制化された。「市場における自由競争の徹底と企業活動の規律強化」を目的とする同法は「経済の憲法」と言われ、日本においても企業行動指針のひとつとして重要な地位を占めてきた。
 しかし、戦後の日本経済の成長期において独禁法がその機能を十分に発揮したかというと、必ずしもそうとは言い切れないケースも見られた。今回の独禁法改正案では、課徴金の引き上げなど制裁強化をはじめ、措置減免制度の導入など同法の措置体系の充実をねらっている。
 これに対し、日本経団連などの経済団体はもとより、日本建設業団体連合会、日本土木工業協会、全国建設業協会などの主要建設業団体も「拙速に改正作業をしないで、慎重な検討を重ねてほしい」と意見を表明している。また、「違反事業者に課徴金の引き上げだけでなく、罰金、指名停止、営業停止などを課すのは二重処罰を禁止する日本国憲法第39条に抵触する」と主張する。さらに、「措置減免制度は日本の文化と法体系に馴染まないもので、相手を故意におとしめる手段として悪用されるおそれがある」としている。
 「経済の憲法」である独占禁止法の改正案に「憲法違反」条項が含まれているという指摘は、あまり大きな論議を呼んでいないが、特に慎重に検討すべき部分である。過去の判例では「課徴金は行政罰なので、他の刑事罰と競合しない」としているが、「課徴金の引き上げが一定の限度を越えれば、制裁にあたり、憲法の禁止する二重処罰にあたる」とする見解も出てきている。
 独禁法改正案を国会に提出しようとする公取委と、拙速な改正に反対する経済団体、研究会で調査を進める自民党、そして、独禁法強化に向けて圧力をかける米国政府。独占禁止法をめぐる動きは予断を許さない。

一覧へ戻る

14日間無料トライアルのお申し込みはこちら14日間無料トライアルのお申し込みはこちら
03-3823-6006【平日】10時~18時
エリアカテゴリー
業種で探す
土木
建築
電気
管設備
業務委託
その他
発注機関で探す
国(関東)・法人・民間など
茨城
栃木
群馬
埼玉
千葉
東京
神奈川
新潟
山梨
長野