業界記事

契約管理能力の向上を/対処方法を詳細に解説/海外建設事業のリスク管理

2004-04-14

 海外建設協会はこのほど「海外建設プロジェクトのリスク管理」をまとめた。海外の建設工事には国内工事に比べて様々なリスクがある。そのリスクを予知できなかったり、対処方法を間違えたために大きな損失を受けた事例は非常に多い。同協会の契約管理研究会では、会員企業が実際に海外のプロジェクトで遭遇した損益を悪化させた事例を中心に調査し、「入札や契約の際にどのようにしておけば、そのリスクが防げたのか」を検討した。入札・交渉から契約までに至る失敗事例を始め、為替リスク、物価リスク、気象リスク、法律変更リスクなど37事例に対してリスクを回避するための詳細な解説を加えている。各事例を見て言えることは海外建設事業に対する「契約管理能力の向上」である。いくつかの事例を紹介する。
 [入札後、契約までの間に知らないうちに現場の状況が変わっていた]事例=設計施工・総価契約の開削道路トンネル工事。入札から落札まで10ヵ月を要した。その間に、工事現場範囲内に新たに下水道管が埋設されたが、気づかないまま契約した。下水道管の移設工事を行ったが、追加金をもらえなかった。
 解説=入札時に計画が存在し、約款では契約時の既設埋設物の移設が請負者の責任となっている状況では、入札時点から埋設計画や埋設状況について、特に下水道管の契約上の取り扱いについて、質疑をして十分に明らかにすべきであった。
 [JV協定の規定が不十分で、JVの意思決定がうまくいかなかった]事例=国営企業とのJVで、JVの意思決定の方法が明記されていなかったため、外国企業と国営企業の利害がぶつかることになり、最後まで細部にわたる取り決めができなかった。
 解説=国際JVの場合、意思決定の仕方は難しい。特に、相手側に、自分が意思決定から外されて、利益を持っていかれてしまうのではないかという警戒心がある場合はなおさらである。しかし、決裂したまま工事を中断しつづけることはできないので、とりあえずJVリーダーが決定し、それに従って工事を進め、あとで本社レベルの意思決定機関などで再協議し決定すべきである。それでも決まらない問題は仲裁に持ち込むことも考慮に入れる。
 [請負者としての契約管理が欠如していたために追加工事の処理などで損失が出た]事例=数棟から成る既存建屋群の改修工事で、工事期間中に発注者は当初計画を変更し、一部建屋を解体してまったく新しい建屋として建設することとした。内部改修のみを目的とした暫定金額をはるかに超える新築工事について、新たな単価の設定もされず、類似のBQ単価を使用して精算することとなった。
 解説=契約書にいかに立派なことが書いてあっても、契約書がひとりでに仕事をしてくれるわけでもなければ、契約条件が自動的に請負者の権利と利益を守ってくれるわけでもない。仕事を進め、対価を請求し、正当な設計変更や追加支払いを獲得するためには、あくまでも請負者自身の能動的な行為が必要である。ルールブックである契約書を媒介にして発注者・エンジニアおよび請負者がフェアプレーで対決するのが契約に基づいて仕事をするということである。請負者は、当該BQ項目の単価は解体・新築工事に適用されるべきものではないと主張し、解体と新築のために別途適正な単価を要求すべきであった。
 [気象条件が請負者のリスクとされたので増水で苦労した]事例=人工湖に架ける橋梁工事の基礎工事を進めていたが、上流で季節はずれの大雨が降り、水位が異常に上昇し、工事が中断された。水位が下がった時点で仮締切りを補強・嵩上げしたが、その後再度水位が上昇し、工事中断が繰り返された。このため、全体工期にも影響し、追加費用も発生した。
 解説=入札に当たって請負者は過去の気象データに十分注意を払って応札すべきであり、特に土木工事では気象の影響が大きいので、より一層注意を払う必要がある。しかし、入札の際、無理なリスクを負わないように条件をつけること、契約交渉ではできるかぎり気象関係のリスクを負わないように粘り強く交渉することが大切である。発注者が気象を請負者のリスクとすることに固執するときは、なぜそのような主張をするのか、その根拠を探り出すことが重要となる。リスクを受けるとしても、「これこれの雨量までは請負者のリスク、それ以上の雨量によるものは発注者のリスク」というように、請負者のリスクに限界を設けることも考慮に値する。
 [全額現地通貨建ての契約で、工期中にアジア通貨危機で現地通貨が暴落し、大きな為替差損を被った]事例=民間発注の大規模造成工事(約1、000ha)。1995年から約6年間の工事を現地通貨建てで契約していたところ、1997年7月にタイバーツ暴落に始まったアジア通貨危機の影響をまともに受けることになった。同年第4四半期頃から現地通貨が急落し、現地通貨契約額は円換算すると5分の1の価値にまで下落した。施工当初に円貨で投資した工事運営資金がまともにその影響を被り、欠損を余儀なくされた。
 解説=この事例の問題は為替リスクの受動的な回避というだけでは対応しきれないものである。まず第一に、現地通貨100%で契約することのリスクをより慎重に判断し、全部または一部を外貨建てにする交渉をすべきである。
 [法律が変更され、予定外の税負担が生じたが、法変更のリスクを請負者が負うことになっていたのでどうしようもなかった]事例=施工途中の1997年1月1日付で建設業に係わる所得税法が改正され、「請負金の2%が源泉による最終課税」となった。アジア通貨危機の現地通貨暴落による欠損工事であったにもかかわらず、最終課税であるため還付請求もできないまま税務申告を行わなければならず、同税の負担を余儀なくされた。
 解説=「工事施工国の法律の変更は請負者のリスクである」という契約条件があった以上、この事例の損失を回復することはできないと考えられる。法律などの制定、改廃、変更のリスクを決して軽視すべきではなく、よほど確かな根拠や事情がない限り、この事例のような契約条件を受けるべきではない。

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