業界記事

朱鷺メッセ連絡デッキ/全ての区間の新設を提言/費用は約7億/最終報告書

2004-01-22

 朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故原因の調査を進めて来た事故調査委員会(委員長・丸山久一長岡技術科学大学教授)の最終報告書がまとまり、このほど平山征夫新潟県知事に提出された。それによると、設計・工事監理・施工上の問題点を指摘したほか、新潟県及び関係者への提言が盛り込まれた。また、復旧に関しては、長期的な安全性の観点から全ての区間を新設するべきと提案している。県では新設費用は総額で約7億円と試算している。
 最終報告書によると、先に公表した崩落メカニズム(本紙1月6日付2面参照)のほか、関係者会議等を通じて問題を未然に処理するべきといった新潟県及び関係者への提言が盛り込まれた。
 このうち、今後の対応について、県では残存しているデッキの<1>支柱の新設<2>PCa床版の補修<3>斜材ロッド定着部の補強―を行い、崩落した部分を鋼構造物で新たに造り変える場合の復旧費用は約4億6、000万円と試算。一方、残存デッキを撤去し、全てを鋼構造物で新規に建設する場合の費用は約7億円(建設費約6億円、撤去費約1億円)と見込まれている。復旧策のうち、残存デッキを活用する場合は、崩落による部材への影響を全て把握しかつそれに対応することは困難であり、<1>~<3>の工事を実施しても長期的な安全性に問題が残ることから、全ての区間を新設すべきであるとの見解を示した。
 また、入り江側連絡デッキ及びアトリウム前連絡デッキの今後の対応では、両デッキは施工に関して特段の問題が発生しておらず、ジャッキダウンも順調に行われていると指摘。加えて目視による現況の外観調査においても異常は見つかっていないことから、現在の支保工の設置と日常的監視を継続することにより、当分の間供用することは問題ないと考えられるが、両デッキともに斜材ロッド定着部の作用荷重から判断すると、すみやかに補強を実施する必要があるとした。
 なお、来る26日には同事故に関連して県議会建設公安委員会が開催される予定であり、同委員会で責任関係を明らかにする見通しとなっている。
 朱鷺メッセ連絡デッキ落下事故調査委員会がまとめた最終報告の主な内容は次の通り。
 平成15年9月から5か月近くの間で10回の全体会合を重ね、なぜ崩壊したかという物理的側面およびその遠因となった設計・施工のプロセスについてようやく結論を得ることができた。ここでそれらをまとめるとともに、新潟県および関係者への提言を述べる。
 崩壊の原因
 朱鷺メッセ連絡デッキ構造物の崩落後の調査から、崩壊した区間で主な構造物の破断部は、斜材ロッド定着部が8箇所、鋼上弦材2箇所、床版3箇所であった。
 破断部の詳細な観察、耐力計算、部材実験結果を基本として、崩落後の構造物の状態、部材各部の破壊状態、目撃証言、関係者ヒアリング、解析的な検討等を総合的に勘案した結果、朱鷺メッセ連絡デッキ構造物は、PCa床版の斜材ロッド定着部(入江側R21)の破壊を起点として、他の斜材ロッド定着部の破壊、床版のPC鋼線の破断、上弦材の破断が連鎖的に生じて崩落に至ったものと推定した。
 崩壊の起点となった斜材ロッド定着部(入江側R21)の破壊の主因は、設計耐力の不足である。また、持続荷重下での破壊が供用開始後の短期間で生じた原因は、耐力不足の一因でもある斜材定着部のU字形補強筋の配筋不具合であり、さらに連絡デッキ構造物に初期損傷を与えた第1回目の不適切なジャッキダウンと考えられる。
 設計・工事監理
 施工上の問題点
 朱鷺メッセ連絡デッキ構造物の崩壊の主因は、PCa床版の斜材ロッド定着部の構造設計における不適切さである。このような不適切さは、通常、設計者や施工者および発注者による検討が適切になされていれば是正された可能性がある。
 なお、この構造の特殊性と施工手順の重要性が、設計者、工事監理者、施工者および県で十分に共有されていたとは思われず、設計上および施工上、特別の配慮を必要とする構造物であるという認識が関係者間で不十分であったことがあげられる。
 事業の進行においては、構造設計と施工が平行して行われている時期があり、構造計算書に基づく施工手順の計画は、設計者、工事監理者および施工者の共同で十分に検討されておらず、設計変更等の情報が錯綜していた。そのため、承認・承諾の手続きも含め、情報の共有がなされておらず、また責任の所在も不明確になっていた。
 残存する連絡デッキ
 崩落した連絡デッキと同種の構造を持つ連絡デッキが、朱鷺メッセと佐渡汽船間に残存している。また別に入江側にも歩道橋のデッキがある。朱鷺メッセと佐渡汽船間に残存している連絡デッキについては、R19からR27間の連絡デッキの崩落に伴い、損傷や残留変形が生じている。そのため、全体的な補修・補強が必要であり、長期的な安全性に問題が残ることから、撤去して再構築すべきであると考えられる。また、入江側・アトリウム前連絡デッキについては、ひび割れは見られるものの大きな損傷はないので、当面は支保工の設置と観察を継続した上で使用するが、すみやかに斜材ロッド定着部の補強を適切に行う必要があると考えられる。
 県・関係者への提言
 <1>構造設計者は、施工経験の少ない特殊な構造形式を有する構造物の設計において、完成後の状態での安全性を確保するのは当然として、完成に至るまでの施工段階を考慮した検討も行うべきである。この種の構造物の施工は通常の建築物とは異なる施工方法が必要となる場合が多く、構造設計者(構造の特殊性を熟知した技術者)による工事指導(工事監理)が必要不可欠である。それゆえ、構造設計者は、構造の特殊性(長所と注意点)と施工の重要性を発注者および施工者に十分説明し、その認識を共有しておく必要がある。
 <2>施工者は、施工する構造物の構造的特徴(構造上の重要な点、施工上の注意点)をよく知っておく必要がある。また不具合を生じさせずに構造物を完成させるためには、どのようにして施工を進めていくかも十分に検討する必要がある。特に施工経験の少ない特殊な構造形式を有する構造物の施工には、構造設計者(構造設計者による工事監理者)と、構造に関する情報を共有し、共同による施工方法の検討を行うべきである。
 <3>設計変更、指示、品質管理等に関する情報は、その内容だけでなく、作成者、承認・承諾者、日時を含め、関係者間で食い違いのないように共有して管理するとともに、責任等の所在が明確になるようにすべきである。
 <4>発注者は、設計、工事監理、施工の適切な遂行に必要な期間や資源を確保し、さらに、設計者、工事監理者、施工者間の協同体制の構築が容易であるような発注形態をとるべきである。特に構造等が複雑で特殊な場合には、その構造設計者が工事監理するように発注すべきである。それでも問題が生じる可能性のある場合には、例えば関係者会議や第三者を加えた関係者会議等を積極的に開き、その問題を未然に処理するよう調整すべきである。
 <5>発注者は、設計・施工の早い段階から、構造計算書や構造設計図書等の再検討が構造設計担当者、デザインリビュウする設計者、工事監理者および施工者間でなされるような仕組みを導入すべきである。設計上の不適切さは、設計者による再検討、施工者による検討などにより見つけ出され、改善される場合が多い。
 <6>発注者である県は、公的建築物について一般利用者の安全を確保する責務があり、また、建築確認の特例(計画通知制度)が適用されるため、県は自ら、公的建築物の安全性の確認を行うことになる。そのため、特に建築物の構造等が複雑で特殊なものを建造する場合には、十分な技術力を持った設計者や施工者に発注するとともに、必要であれば専門家の意見等を聴取する等により、その発注の成果の妥当性を確認すべきである。
 最後に、「朱鷺メッセ」というすばらしい施設が今後より一層活用されるよう、連絡デッキが一日も早く、安全で正常な本来の姿に回復することを希望する。

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